"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」FLA・いらつめ活動報告 essays/activism ->> NO TIME FOR PARADE? レズはなにに忙しい? ―いらつめブース出展+αTLGPレポート― by runrun

「パレードにいらつめブースをだしませんか?」という砂川秀樹さんからのお誘いをきっかけに、2006年8月12日、いらつめはブース出展というかたちでTLGP(東京レズビアン&ゲイパレード)に初参加することになった。

いらつめブーススタッフのJanisは1号から3号までのバックナンバーをキャリーバックに詰め込み、mikeは大きな黒のいらつめフラッグと手縫いの布ナプキンを抱えて代々木公園にやってきた。ブースにはいらつめに興味をひかれたひとが立ち寄ってくれ、いくらか売り上げもあり、インタビュー取材も受け、ひさびさに活動らしい活動ができた。
この成功も、ブースを出すと決めてからその資金集めのために企画した、砂川さんと飯野由里子さん、そしてイトー・ターリさんをゲストに迎えたトークベントからはじまっていたといえる。

いらつめブースパレード前日の12日に、夏の旅行から帰ってきた私は、その当日は単なるブースの店子と化した。だが、裸足を椅子の上に投げ出して、雨が降る前の蒸し暑いいっとき、うちわを仰ぎながらのアジアの店子状態でも、パレード会場やおとずれる人々の雰囲気や感情は、会場に朝9時から夕方4時までいればいやおうなしに伝わってくるものだ。

会場ではまず、男子と彼らにくっついている女子らの盛り上がりを感じた。一方、レズビアンとその周辺の女子はまず、参加者自体が少なかった。女子が少ないのは、パレードスタート直前まで勢いを増し続けた、どしゃぶりの雨と轟音の雷という悪天候のせいだけではない。男子何十人に対して女子1人の割合である、イベントのブラスバンド演奏の有志メンバー構成からもそれは明らかだった。パレードに参加している女子は、絶対数が少ないのだ。
シンポジウム雨宿りにわれらがブースのテントに来た友人は「ここ最近、パレードみたいな人権活動はクールと思われてないのか、参加する人が減ってる気がする」という。わたしが歩いた女子フロートは、他のフロートに比べてなんとなくすきまができるような人数で、イトー・ターリさんによる巨大おっぱいオブジェが無ければさらに寂しさを感じるほどのものだった。

では見込まれた女子の参加者たちは雨模様の空で外に出る足が遠のいてるかと思いきや、渋谷―表参道のパレード順路をとりまく見学者はそれなりに沢山いたのである。このひとはレズ、もしくはレズフレンドリーだと、わたしの嗅覚が伝える人たちが。彼女たちの応援は、確かに嬉しく勇気付けられるものだ。だがすぐに、「誰でもすぐに参加できるんだから、一緒に歩けばいいのに」と、そして「私も歩いてるんだし、ここはひとつ、一緒に歩いてくれよ!」と叫びたくなったことはここに記しておく。

パレードを傍観する彼女たちは、自分のデートやショッピングといったプライベートの予定で忙しく、パレードなんて二の次だと思っているのだろうか。わたしは雨で滑りそうな車道を歩いている間、参加しない彼女たちについて考え続けた。歩くだけの2時間程度でいいから、あるいは歩かなくても会場に来るだけでも、自分が身をおくこともある、助けられることもあるレズビアン業界女子フロートに自分の時間とすこしの体力を貢献しようという気が、彼女たちにはないらしい。

そこには、現在の日本に生きるレズビアンのライフスタイルが透けて見える、ということもできる。パレードに、たとえお祭り程度のノリでも参加しようとしないレズビアンたちは、いったいなにに日々いそしみ、なにを価値あるものとして優先させているのだろう?
そこで思い浮かぶのは、毎日仕事で忙しい20代〜50代のレズビアンの友人たちの姿だ。会計、事務、人材派遣、病院、教職、メーカー、アパレル、飲食、商社、不動産、出版、デザインなどなど各業界で勤める彼女たちは、自分たちの生活費を稼ぐのに忙しい。そして合間に友達や家族とコミュニケーションをとっている。その時同様にレズビアンとしての自分をいよいよ発揮する時間が来るというところか。
レズビアンやセクシャルマイノリティの友達や恋人と人間関係を作り、維持していくだけで精一杯で、明日からまた仕事に戻る、といったところではないだろうか。そのようなライフスタイルの中に、レズビアンのコミュニティへ参加や維持や貢献、セクシャルマイノリティの人権に対する意識などが浮上してくることが、当然の流れに未だならざるのが、現在の日本に住み働く多くのレズビアンの現状意識のひとつであることは事実である。
それは彼女たちが仕事で忙しいからだという理由で一刀両断できる問題ではないように思われる。

沿道/パレードレズビアンであることは、彼女たち−パレードには参加しないレズやバイたち―の人生の中で高い価値を持たない、あるいは持つことができないのだろうか。確かに大都市で生活をするなら、仕事をはじめとする経済活動は、レズビアンであることから対峙すべき問題を意識することを押しのけて、その優先順位が高くなることは想像できる。最近どこかで拾い読んだが、働く女性で残業を断らない割合は、男性のそれよりも高いという。

しかしながら、自分の中のレズビアンの価値が低いからといって、気の向いた時だけコミュニティにアクセスすればいいというような態度はない。思い出したように出会い系サイトやクラブやバーのレズビアン業界に足を踏み入れては、またすぐにそれらが十分に認知されてない日常世界へと流れていくレズビアンたちが多数であるとしても、レズビアンの潜在的人口が減ることは無い。たとえ仕事で時間がなくとも、レズビアンという自らの権利やプライドのため集結できるコンセプト、そのひとつがこのパレードであることを意識することはできるはずだ。

そのためにも、パレードの女子フロートへの参加者が増えるようなアイデアがもっと欲しい。毎日自分の生活に必死になっているどんなレズビアンも、一年に一回のこの日の数時間は、東京のど真ん中に集まっては練り歩いてみても悪くは無い、むしろエンパワメントだと思わせるような企画や宣伝が今後展開される。もっとレズにとってパレードが盛り上がる…と、ひどい豪雨の中びしょ濡れになりながら、真夏のさなかに震えながら、パレード会場のいらつめブースで私はこの夏のひと時を過ごしたのである。
旅の風景が人生の終わりまで心に残るように、レズビアンの風景が人の心に残ることを求めることはできると確信して。

出発を待ちながら

text and photographs by runrun
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    <<参考URL&記事>>
  • 東京レズビアン&ゲイパレード2006
    http://www.tlgp.org/

     
  • ブース出します:ファンドレイジング・パーティご案内 (Janis) 06.06
    http://selfishprotein.net/lesart/jap/2006/060624a.shtml

     
  • パーティご案内 (2):手をつないで 街へ出よう (Janis) 07.06
    http://selfishprotein.net/lesart/jap/2006/060702a.shtml

     
  • 夏です。布ナプキン、使っています (Janis) 08.04
    http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/040819a.shtml

     
  • いらつめ人のバックナンバー
    http://selfishprotein.net/lesart/jap/categories/backnumber.shtml

     
    13.10.06
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