"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」essays/activism ->> hometownlessness 友だちのこと (1)

2006年から2007年にかけて、自分にとって一番近いと言ってもいいくらいの友人が、妊娠して結婚して出産した。レズビアン仲間だったからびっくりした。だいたい、ある時点まである人がプロデュースしていたその人像と、その人の行動にズレがあるときは、そのズレがどれだけ微細であっても変な感じがする。らしくないとか言っちゃう。勝手な期待をしておいて、裏切られた気分になる。

えっとね、コドモはいいんだ。コドモは。私自身コドモを育てる機会があったらいいな、と思ってる。でも彼女が妊娠したのはともかく、私が報告をもらった時点で出産すると決意していたのは意外だった。そんな計画というか欲望というか、そういうのがこれほど近い未来にその人にあったとは知らなかった。産むつもりなんだ、というのが最初に驚いたこと。でも出産自体はめずらしくもなんともない。非婚のシングルマザーを何人か知っているし。しかしそれをきっかけに法律的に結婚していたのは、意外を通り越してショックだった。法律婚はしないだろうとこれもまたこちらは勝手に思い込んでいたから。

結婚していたのは直接じゃなくて彼女のブログを読んで知った。コドモの父親と一緒に暮らすだけじゃなくて結婚していたと知ったとき、何だか彼女が知らない人になったみたいだった。もっと前から知らない人だったのかもしれない。私が勝手に、彼女のことを分かったつもりになっていただけ、なのかもしれない。

妊娠中の彼女の様子は、コドモの父親である男性のブログを通して知ることになった。電話は数えるくらいしかしなかった。メールもあんまり。精神的に不安定になっている相手に対して、無意識なんだけど何だか責めるみたいな口調になってしまう。それで自己嫌悪に陥るのがいやだった。他人の人生なのにね。彼女の選択を何も責めなくてもいいのにね。

それで、一年以上会ってなくて、ひさびさにこの前会いに行った。相変わらず一緒にいると楽しくて、話は尽きなくて、コドモは写真で見ていた通りかわいくて。変わったといえば変わったし、変わってないといえば変わってない。それは、お互いそうなはず。今更私が問い詰めたりすることもなくて(たぶん)、具体的なサポートを提案することも要求することもなかった。ただ会っていなかった間のことと今後の決意なり計画なりを報告し合った。

で、2006年半ばから私が実質的にいらつめの記事の更新をしなかった理由の一つは、この件を書かずして他のことなんて書けないと思っていたから。それで書けるようになるのを待っていたのだが、少しも書くことはまとまらないまま1年以上経ってしまった。この間、他人のことなんてもうどうでもいいと投げ出したくなっては踏みとどまる、の繰り返し。

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Janis Cherry
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    30.12.2007
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