"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」レビュー ->> 本  田中 玲『トランスジェンダー・フェミニズム』 reviewed by mike

トランスジェンダー・フェミニズム 表紙トランスジェンダー・フェミニズム
田中 玲 (著)
価格: ¥1,680 (税込)
出版社: インパクト出版会 ; ISBN: 4755401569 ; (02/2006)

「男」「女」という制度的な枠組み、発想の思考回路に違和感や居心地の悪さを覚えながら毎日を過ごしている方、必読。

著者である田中玲は、元レズビアン・現トランスジェンダー表現体へ変化していく過程の中からわき出て来た疑問を自らへ社会へ問いかける。

(以下引用)

ミソジニーやホモフォビアといった切り口から、どれだけ割算や引き算を繰り返しても、性別違和は打ち消すことのできないものとして、私の中に影を落としている。だからこそ男/女というカテゴリーそのものを問い直し、私を名付け回収しようとする圧力に抵抗し続けること。それが私の中では、矛盾をはらむ「私」という一人称の内に、忘れられることなくとどめ置かれた課題でもある。

「女」とは誰のことか。それを教えてくれたフェミニズムそのものが、現実の中では、時に私を抑圧する装置となる。

「男」「女」という分け方がどれほどいい加減なものか。しかも、「明確」なものとして、この社会の中で絶対的価値を持っているか。

(引用ここまで)


(『トランスジェンダー・フェミニズム/第1章◎なぜトランスジェンダー・フェミニズムか』より)

元純女(じゅんめ:無自覚ヘテロ女子)・現レズビアンの私の中にもトランスジェンダーの田中玲と同じ問いかけがある。「女」というカテゴリーを教えてくれたのがフェミニズムであり、その考え方は私の心を解体したにも関わらず、その後も変わらず私を抑圧してかかる。その抑圧とは「女」という思考の発想自体であり、私に女性解放を呼びかけたフェミニズム自体であるという矛盾を抱えて生きている。

しかし、このような自己矛盾や対社会矛盾を理解するのに、学者や専門家が情報収集し、分析してまとめてくれるのを待つ必要はないのだ。

著者自身が見聞きし、自分の身体を通して感じてきたことを時に左翼文脈的に、時に日常的なエッセイとして歯切れよく書き下ろしている。

また、トランスジェンダー当事者である著者が、どんな風に言葉を選んで使うのかという側面でも性別枠組みへの発想転換を読み取ることができ面白い。

著者は日々現場での活動を積極的に行っている活動家でもある。その現場力からくるアップデートされたクィア&フェミニズム関係用語解説も一読の価値あり。

性も多様であれば活動現場も多様であり、これが用語解説の決定版という訳ではない。細かい点で異論を差し挟む余地もあるだろうが、私たちが使う用語が増えている現実と使う人によってニュアンスが違ってくる事をフレキシブルに受け止めていく目線を大切にしたい。

mike

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    :: 目次 ::

    第1章◎なぜトランスジェンダー・フェミニズムか

     「女」というカテゴリー
     なぜトランスジェンダー・フェミニズムか
     女である、ということ
     フェミニズムとの新たな共闘へ

    第2章◎トランスジェンダーという選択

     トランスジェンダーという選択
       ―FTM(女性体から男性体へ)のライフスタイル
     トランスジェンダーとしてのカムアウト
     ポリガミーという生き方
     パートナーの親に会いに、アメリカに行く

    第3章◎「性同一性障害」を超えて、性別二元制を問い直す
              ―『トランスジェンダリズム宣言』

     「性同一性障害」を超えて、性別二元制を問い直す
     性同一性障害者の性別取扱いの特例に関する法律をめぐって
     典型的なFTMトランスセクシュアルの個人史
        ―虎井まさ衛『女から男になったワタシ』
     正規ルートの診療とは

    第4章◎多様な性を生きる

     すべての言葉を貫く「私」という通底音
       ―掛札悠子『「レズビアン」である、ということ』
     炸裂する過激な愛 ―パット・カリフィア『パブリック・セックス』
     あなたが本当にジェンダーから自由になりたいのなら
       ―パトリック・カリフィア『セックス・チェンジズ』
     パートナーシップとは何か
       ―『同性パートナー 同性婚・DP法を知るために』
     多様な性を生きる人たちとDV
     セクシュアリティを考える拠点に
       ―クィアと女性のための新たな共闘の場の提案

     あとがき
     初出一覧
     用語解説+おすすめWEB


    09.03.06
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