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"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」essays ->> カワイイコニハマタタビヲハカセヨ 性別に自覚的になるということ〜イギリス最終章 (1) by Sammy
さて、日本に帰って翌日には私はもう働いていた。名刺の渡し方を学び、得意先挨拶まわり…疲労。 イギリスの恋人、Wとはチャットで毎日会話。4月に日本に来ることがわかっていたのでその計画を話で盛り上がってました。しかし私より日本のゲームのことやアニメのことに詳しい人でして、勿論日本に来るのは日本のゲームをしにくるのが目的です! またゲームか…、ロンドンでもゲーセンに何時間も軟禁されたしどうしようと思っていたが、Wの東京の友人カップルとディズニーシーデートすることになり、よかったよかったと思っていたある日、チャットで思わぬ告白をされてしまいました。 「I wanna be a girl」 私が前に女の子と付き合いたかったというのを気にしてそんな冗談を言っているのか? それとも何か深い意味があるのだろうか…。 「どういう意味?」 「その通りの意味だよ、誰にも言ってないけど女の子の格好したいんだ」 私はしばらくぼーっとして何も返せなかった。 「ボクのことキライになった?」 「いや、キライになるわけないよ。でもどうして今まで黙ってたのよー!」 「誰にも言ったことなかったから怖かったんだ」 脱力。ガラガラガラ…というのは多分こういう時に使う言葉なんだろう。 私は偉そうにジェンダーだセクシャリティだと言ってたくせに、自分の恋人を勝手に男だと思いこんで男と付き合っちゃってる自分を嫌悪したり、相手に男役割を押しつけてたのだなぁ。自分が見てきたものって何だったんだろう、私が拘っていたこととは何だったのだろう、頭の中が疑問で埋め尽くされそうだった。 それから数日私たちはそのことについて話し合った。それはとても神経のいる作業だった。日本語で話す場合はとても言葉に気をつけて喋る内容だけれど私は残念ながら英語で気をつけれるほどの会話力がなかった。 それでもWは一生懸命説明をしてくれた。誰にも話したことがなかったことなのだからWもまだ自分でもどうしたらいいのか、どうしたいのかわからないと言っていた。一つだけ確実なのは女装をしたいということで、それも日常的なレベルでしたいということ。手術をするとか身体的違和感についてはまだ自分でもわからないし、自分の欲望より母親や友だちに見放されることへの恐怖感が勝っていると言ったので、「私はそのことでアナタをキライになったりしない」と何度もくりかえした。 でも私ができることには限界があると思った。側にいるわけでもないし、トランスヴェスタイトの当事者でもないし知識も大してなかった。 「もしアナタが日本に来るのならMTFの友人を紹介してもいいし、女装がしたいならお店に行ってもいいよ。だけどイギリスでは助けることができない。ネットで探してみるのはどう? 自分がしんどいならカウンセリングを受けてみるのもいいと思うよ」 そう提案してみたが、Wは1人の理解者ができたことに舞い上がっていた。そして自分の力で外に出てみるにはまだ早いらしかった。 女装して町を歩くこともロンドンのような大都市ならともかく、なんせ町を歩けば知り合いがあちこち歩いているというような小さな町では厳しいだろう。母親にばれたらと考えると何もできないと言っていた。Wの母親はなかなかカッコイイ人で彼氏をコロコロ変えているらしい。兄貴は母親にもカムアウト済みのとってもオープンで雑誌に載るほどカッコイイゲイだが東洋人蔑視があるらしい。おまけに弟は女装願望がありますなどと言ったら母親は絶句するだろうなぁ。などと想像していたら面白かったけれど、私はまだピンとくるものがなかった。 >> つづき (2) >> サミィ 13.11.05 Copyright © 2002-2008 "iratsume." All Rights Reserved. |