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ポリガミーという生き方

私はFTM系のトランスジェンダーなのだが、ポリガミー(一対一の関係を優先させず複数の人と関係を持つ人)でポリセクシュアル(相手の性別に関係しないセクシュアル・オリエンテーション。ヘテロセクシュアル女性、ヘテロセクシュアル男性、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、FTM、MTF、FTX、MTX、インターセックスと対象の線引きは全くなく幅広い)のバリタチ(セックスにおいて受けにならない攻める側)である。

ポリガミーのことを知らない人に説明すると、「それって浮気するっていう意味?」と尋ねられることがある。浮気とはモノガミーの概念だ。一対一で絶対お互いのことを一番に考え、セックスも二人の間でしか行わないと決めた貞操義務のある「夫婦」のような間柄で、第三者と関係を持つと「浮気」と言われることだろう。ポリガミーは、他の人と恋愛しようがセックスしようが自由。開かれた関係なのだ。だから、嫉妬心の強いモノガミーの人はポリガミーに向かないし、ポリガミーの人と付き合うと関係が混乱するはずだ。

私は誰かとセックスの関係を持ったことについて嘘はつかない。コミュニケーションの一つだと思っているので悪びれたりもしない。いつもオープンなので人の反感を買うこともあるが、それはモノガミー文化の強い社会だから、仕方ない。みんながポリガミーだったらいいのに、と思ったりはするが、そうすると世の中の恋愛ドラマの大半はなくなってしまうだろう。

セックスのある関係は特別なものではない。お茶を飲んだり、ごはんを食べたり、遊びに行ったりといったことでも、積極的に一緒にしたいと思う人から絶対一緒にしたくない人までいる。私にとってセックスはその延長線上にある。しかし、ポリガミーに重要なのは特にセックスというわけでもない。大切に思える大好きな人たちと楽しい時間を過ごすことができること。そのことで後ろめたい思いなどしなくてもいい。それがポリガミーだと私は思っている。
今のパートナーは私と同じポリガミーだ。だから、すごく気が楽だ。パートナーは同じFTM系なのだが、ゲイを自認する人でクラブに踊りに行ってはカッコいい男を引っ掛けようと努力する。時々引っ掛けた彼を同居する家に連れて帰り、私と挨拶することもある。私もいろんな人を家に連れてくる。デートの時はちゃんと報告し「今日は〜に会いに行くわ」というと「楽しんできてね!」とお互いを送り出している。しかし、私とパートナーは、何故か分からないが、ポリガミーでありながら「パートナー」で、そこが面白いなと思う。

人との関係性とは信頼関係だ。セーファーセックスはもちろん重要だが、いろんなことを正直に話すことができ、お互いリラックスできる空気を作れること。お互いの楽しみを大切にできること。そうしたことを私たちは何よりも大切にしている。生きている限り、素敵な人との出会いはたくさんある。世間一般ではモノガミーへの幻想が相当強いが、私は今、ポリガミーであることが本当に幸せだと思っている。

Text by Ray Tanaka
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    04.10.04
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