"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」エッセイ ->> 灼熱天国 カリブ通信 2B-5

これらの「ただ振り向かせたいためだけに発せられる呼びかけ」は、純粋に珍しくて、ということがほとんどだと認識してるが、ときに彼らが持つ中国人をバカにする意図を含んでいることもある。
要するに、子どもが誰かをはやし立てたりいじめたりするときによく見られる、ちょっと嫌な感じの感情がこめられているわけである。

ドミニカ共和国では、陶磁器製品や輸入物の衣服や機械製品など中国製が多く、また台湾政府から開発分野において相当な援助をもらっているにも関わらず、なぜか中国人をバカにする風潮がよくみられる。

彼らの中には「中国は遅れた国」「中国人はバカだ」「中国人はがめつい」などのマイナスイメージがあるらしく、話の中に中国人が出てくるときに、褒め言葉であることは少ない。豊富な資源や商売における機知と経験、そういった人的資源を生かしてめざましく発展している現在の中国の潜在能力に、彼らは全く気づいていない。援助をしてもらっている国に対してバカにするとは、彼らの井の中の蛙ぶりな自信過剰がよくあらわれていると言えるだろう。

したがって、そういう嫌な感じの「中国人!」という呼びかけを、街の中を歩いているだけで、用もないのに大声で叫ばれて振り向かされる、ことが頻繁にあれば、それは誰だって気持ちの良いものではなかろう。

しかも、自分たちの国籍に関してこんな扱いを受けるのは東洋人だけである。

他の中南米カリブ海地域出身の人々はもちろん、アメリカ合衆国の人も、ドイツやヨーロッパ出身の人も、街でそんな風に呼びかけられることはない。

そんなわけで、この「中国人!」という東洋パンダに対する呼びかけは、どんなときも笑顔で挨拶しよう、を心がけるちゃまごにとっても、機嫌の悪いときなど「なんだよ!うるせーなぁ」と心がささくれ立ってしまう呼びかけになったりするのである。
っていうかパンダを見かけて嬉しいのは分かるが、わざわざ大声で叫ぶ必要はないでしょうに…

アナタが東洋人で、もしもドミニカ共和国に降り立つ機会があったら、きっとこの呼びかけの嵐に巻き込まれることでしょう。
こういう呼びかけは実際に経験してみないとなかなか雰囲気まで理解できないはず。国籍に限らず、自分が相手からどんな風に認識されているのかを経験する良い機会になると思うので、是非一度経験してみることをお勧めします。


Text by Chamago
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    05.02.04
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