"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」エッセイ ->> 灼熱天国 カリブ通信 2B-3


どうしてドミニカ共和国人の中には「東洋系=すべて中国人」の認識が染みついているのだろうか?

一般に、世界のさまざまな地域や国を実際に訪れたり、国際的な視野を持って生 活することがない人々にとって、自分の国以外の認識とは自分の生活圏で見聞できる 情報量に左右されることが多いだろう。
これは日本でもそうであり、自分の両親が「黒人=アフリカ圏」程度の認識しか持っていないことからも分かる。

そして、当地の人々にとっての「東洋人」とは映画の世界で見るカンフーや少林寺拳法、アクション映画の世界であり(こちらではテレビなどで見られるこれらの映画が 非常に人気がある)、当地で主に商業分野で生計を立てている在留中国人の姿であ る。

偉大な中国人は、世界中どこの地域に行っても自らのコミュニティを作り、そこ に確かな生活の基盤を築いている。
ドミニカ共和国においても他の国や地域ほどその コミュニティは大きくないものも、街で東洋人系の顔つきを見たらそれは中国人であ ることが多い。

また、この国の政府は「台湾(中華民国)」を一国の独立した国と認めており、それゆえ中国人といいつつも台湾出身の人が多かったり、当地の人々も「台湾人」という区別を用いることも多い。
国籍をたずねられるときに「中国人」の次に候補に出され るのが「韓国人」であるが、これも中国人ほどではないにしても、めざましく当地に 企業進出していたり、在留韓国人も多く、国際協力分野でボランティアが派遣されて いたりと、日本人よりも遙かに認識度が高い。

一方、日本人はというと、数十年前に渡航してきた移民の方々はいるものの数は少なく、また駐在している日本企業も皆無に等しい。当地における大使館、国際協力活動機関関係、日系移民、駐在員などすべての在留日本人を合計したところで、せいぜい 400人程度であろう。
つまり日本人の絶対数が少ないのである。
これでは、いくらメイド・イン・ジャパンが素晴らしかろうと、実際に日本人と接す る機会のない人々にとって日本が存在の薄い国でしかないのも仕方なかろう。
それに 中国と日本は共有するものも多くあり、地域全体を大きくとらえて、「東洋圏」ある いは「東洋人」としてその呼びかけを受け取ればいいではないか。その辺のことを考 慮して、たとえ街中で「チナ(中国人女性)」と呼びかけられたとしても、私は振り向くし嫌な思いを抱くこともない。


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Text by Chamago
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    05.02.04
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