"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」Essays/Feminist News ->> エッセイ 灼熱天国 カリブ通信 2-3


本日は、肌の色や太っているなどの身体的特徴をそのまま呼び名に使ってしまうことについてのちゃまごの考察から。

混血化、移民などによって身体的特徴に、日本では考えられないぐらいの多様さが見られる当地では、違う特徴の人々がごちゃまぜに、それこそその起源さえ定かにできない顔ぶれが揃っているので、自然と前回述べたような呼称が当たり前に生まれてきたのかもしれない。

それにしても多民族国家といわれる USA とのこの違いはなんなのだろう?私的考察としては、やはり、白人と黒人の混血化があまねく浸透していることが鍵ではないかと思っている。

コロンブスによるこの島の発見以降、サトウキビプランテーションでの過酷な肉体労働のために、アフリカから大量の黒人奴隷が強制的に連れてこられた。黒人奴隷が搾取されたことでは USA と同じだ。

しかし、入植してきたスペイン系移民は、これまでの歴史の中でどんどん黒人と混血化してきたのだ。言ってみれば、現在の国民のほとんどが、白人と黒人の血が混じった結果の身体的特徴を持っているわけだ。もちろん、ここでも黒人系の特徴が濃い人々を差別する風潮もないではない。しかし、黒人を差別するといった時点で、自分の中に混ざっている黒人系の血を否定することになるわけで、そこのところで過激な黒人系差別が生まれてこない歯止め(あるいはジレンマ)のような作用が生じているのではないか、と推測している。

話を豊富にある呼称の例に戻そう。ここまでは、主に肌の色や人種的な特徴に基づいた呼びかけについて話してきたが、ここで、他にももっともっといろいろな呼称が、相手に応じてあるのだという例をいくつか紹介しよう。

例えば、子どもや青年に対する呼びかけ。前述の「ホベン」(若い人)というのは男女関係なく青年期の人に対して使われることは述べたが、同様に青年期の人に対する言葉として、「ムチャチョ(男)」「ムチャチャ(女)」があり、これは小学生ぐらいから 20 代ぐらいの若い人まで幅広く使われる。
また、「子ども」といったときには、「ニーニョ(男)」「ニーニャ(女)」、もっと赤ちゃんになると「ベベ」(赤ちゃん)、あるいはこれはこの国だけかも知れないが「チチ」(幼児)と呼びかけるのも普通だ。

また、スペイン語には非常に便利な接尾語がある。たいていの名詞にこれ(語尾に -ito、-ita)をつけると、「ちょっとちっちゃいもの」「ちょっと可愛らしいもの」「その言葉の範疇ではちょっと小さめのもの」といった雰囲気を見事に出すことができるのだ。

これまでの例で言うと、「モレニータ」(褐色若い女性+接尾語)、「ムチャチート」(少年、青年+接尾語)、「ゴルディータ」(太った女性+接尾語)など。だから私などは、「ホベン」(若い人)と呼ばれず「ホベンシータ」と呼ばれ、それを聞くだけで、相手が「自分のことをきっと10代後半ぐらいに思っているのだろう」と予想がつく。

この接尾語は日本語で言うところの「○○ちゃん」と言った雰囲気といえなくもないが、それだけではくくれないもっともっとさまざまなものにつけられる。例えば、オフィスで使うような「紙」は「パペル」、もっと小さいメモ用紙や紙切れを指すときは、日本語では「紙ちゃん」などとは言わないが、この接尾語を使うと「パペリート」となって「ちっちゃな紙」といった雰囲気を出すことができる。
この「なんとなくちっちゃい」「可愛らしい」感は、実は私のスペイン語のお気に入りである。

この言葉が持つ雰囲気はなかなか文章ではうまく伝えられないのでもどかしいのであるが、なんとなく「ちっちゃ〜い」のであ〜る。


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Text by Chamago
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    <<参考 URL>>
  • Slavery and abolition: Black into White in Nineteenth Century Spanish America: Afro-American Assimilation in Argentina and Costa Rica*
    A Journal of Comparative Studies Vol. 5: No. 1 (May 1984)

    非公式ではあるが、「白人化」「脱色」志向が19世紀から20世紀ラテンアメリカ上層部にはあったという。上記の論文では(1)地方農園に連れて来られた人の多くは男性で女性が極端に少なかったので結婚は制限されていたし時期が遅かったことと、(2)乳幼児はもちろん大人も死亡率が高かったこと、(3)貧しい都市環境では結婚後の出生率も低かったことが理由で、アフリカ系中南アメリカ人は割合が結果として低くなっていったという。


    23.09.03
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