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September 20, 2002
子どもの性的虐待の被害に共通する特徴とその影響(80年代までの研究成果から) <性的虐待そのものの特徴> 子どもの性的虐待はいくつかの共通する特徴を追っていく傾向があります。 1. Secrecy 性的虐待は隠れて行われるため、秘密であること。 2. Helplessness 子どもは信頼できるはずの大人に裏切られているため助けがない状態にあること、そして秘密は脅しなどで強化されていきます。 3. Entrapment and Accomodation さらに、性的虐待は何度も繰り返し起こります。一番初めの被害時に助けを求めないと、子どもはその状態に捕らわれてしまい、逃げるよりも我慢して生き残ることを選びます。実際には大人が力を持っており子どもを支配していても、子どもは家庭の崩壊を恐れ、現状を維持し被害を自ら支えてしまうのです。 4. Delayed, Conflicted, and Unconvincing Disclosure 多くの性的虐待はまず発見されません。表面化した性的虐待は、ごくごく一部です。たいていは、何年間もの虐待のすえにようやく発見されます。長く隠されていたため、虐待が分かっても経験をつんだ調査官でなければ、性的虐待があったことを信じません。父親による娘への性的虐待があっても、たいていの母親は気がついていませんし、まず性的虐待そのものを否定するでしょう。もし分かっていたとしても、母親が通報することはまれです。家族外の人間による性的虐待の場合も、社会的な地位などの理由から報告されないことがよくあります。 5. Retration 第三者による発見後も、家族の圧力はとても大きく、被害に遭った子どもに性的虐待はなかったと言わせてしまいます。特別な支援を、助けを求めてきた子どもにしない限り、子どもは被害を否定し、家族を壊さないことを第一に考えてしまいます。 (以上はこちらの論文の抄訳です。"Classic Papers in Child Abuse" pages155-171 The Child Sexual Abuse Accomdation Syndrome. Summit, Roland C. 1983.) <子どもの性的虐待の影響> 性的虐待直後の影響(虐待が終ってから2年以内): この時期の研究については成果が揃っていません。しかし、多くの臨床例で不安、恐怖、うつ状態、怒り、敵意、過剰なあるいは年齢につりあわない性行動が報告されています。 長期にわたる影響: 最も多く報告されている症状はうつ状態です。次に多いのは不安や緊張。子ども時代の性的虐待の被害は、成人後の女性に、うつや自傷行為、不安感、孤独感や自分が社会からみて特別悪い人間だという思い込み、低い自己評価、高確率で再被害に遭うことといった影響を残しています。 自己評価の低さは初期には虐待との関連がはっきりとはしていないのですが、長期にわたる影響の調査では強い関連があることが示されています。また、近親姦の被害者は自己評価の低い傾向がより強くみられます。 子どもの性的虐待の女性サバイバーは異性・同性とも人間関係で、また親として子どもと接する際になんらかの困難を抱えています。また、大人になってから性暴力被害を再び受けることも多いです。 ある研究では子どもの性的虐待被害者であった女性の33%から68%が(この差異は虐待の度合いによる)、子どもの性的虐待の被害者でなかった女性では17%がレイプの被害に遭っています。 また、ドメスティック・バイオレンスの被害者となることも多く、ある研究では、子どもの頃性的虐待を受けていない女性が暴力的な夫を持つのは17%に対して、性的虐待を受けた女性が暴力的な夫を持つのは38から48%であるといいます。また夫から性暴力を受けた女性は性的虐待サバイバーの場合が40から62%で、性的虐待のサバイバーでない女性は21%です。 成人後にセックスの面でなんらかの困難を抱えている性的虐待のサバイバーは多いようです。特にその傾向は近親姦の被害者に顕著です。ある臨床例を元にした研究では、87%のサバイバーが性生活について問題を持っているのに対し、性生活について問題を持っているサバイバーでない人は20%に過ぎません。性生活についての問題とは、例えば性的な人間関係に満足していない、セックスすることに罪の意識を感じる、不安感が強い、といったもの。 臨床例でない母集団を対象とした調査では、80%の近親姦被害者はセックスをリラックスして楽しむことができない、セックスを避けようとする、また逆に強迫的にセックスをしようとするといった問題を持っています。また、いくつかの研究ではある一定の割合で近親姦サバイバーが、人から注目されるためや人をひきつけるために複数の人たちとセックスするという結果も出ています。他人を信頼することの困難さや、本人にとって良いとは思われない性生活が性的虐待の影響と考えられていますが、一方で結果の曖昧さがつきまとっており、この面での性的虐待の影響については専門家の合意が得られていません。 <虐待の種類による影響の違い> 長期にわたるほど被害が重いという調査結果は出ていません。ただ、虐待の期間は性的虐待が始まった子どもの年齢、被害者と加害者との家族関係、性的虐待そのものの性質にも関係があります。 より近い近親者からの性的虐待ほどその被害が重いとされています。しかし、家族としての関係がそのまま被害者と加害者の関係の近さをあらわしているとは限りません。ただし、ある研究では父親(血のつながりはある場合もない場合もある)が加害者の場合は、他の家族が加害者の場合より深刻な心的外傷であるという結果が出ています。 性器-性器、口-性器、口-肛門、肛門-性器の接触があった場合は59%、指による接触しかなかった場合は36%、望まないキスや服を着たままの接触の場合は22%が、それが心的外傷になったと報告されています。分かっているのは、性器の接触がある場合の方がより深刻な心的外傷になりうるということです。 力でもって無理やり性的虐待を受けた場合の方がより深刻な心的外傷になります。 子どもの年齢が幼いうちに性的虐待が始まっている場合ほどより深刻な心的外傷になりうる傾向はあるようですが、他の要素を切り離して調べることができていないため、証明されてはいません。 加害者の性別による影響の差は、加害者が女性の場合が極端に少ないためよく分かっていません。 加害者の年齢による影響の差を調べた調査では、より年齢の高い加害者ほど子どもにとってよくない影響が強くなるという結果を一応示してはいますが、これもまだよく分かっていない部分が多いです。 また、秘密が守られていた場合と報告された場合の差異や、発見時の対応の差が子どもに与える影響も今後の研究が待たれます。こういった要素は先に挙げた虐待期間とも関連があります。 (以上はこちらの論文の抄訳です。"Classic Papers in Child Abuse" pages 217-238 Impact of Child Sexual Abuse -- a review of research. Browne, Angela. and Finkelhor, David. 1986.) Copyright 1999-2003 Lati. All rights reserved. |