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冷めてるつもり

あのー、政府というのは何か私と関係あるのか。
ひょっとして、福祉制度は私に利用できるものなのか。
つーか、日本の法律や制度の意図と実際はそもそも一致してるべきものなのか。
だったら、私が活動すればそれって一致するもんなのか。ほんとに?

というあたりで私の思考は普段止まっているので、何か抗議要請があっても具体的な行動なぞほとんど行き着かずに傍観していることが多い。法律や制度や経済なんて信じてる人が信じてるだけで、単なる権威主義ではないか保守的な考えだなと小バカにしたりもする。しかし一方ではお金も権利も「最低限」欲しいので(取り込まれているに過ぎないとしても)、私が何にせよ損するのは理不尽であることよ。おうおう。と泣いて時々勉強したり、地味に署名したり、少しだけ意見表明したりする。

そういう私にとって行動を起こすときに足かせになっている大きな部分は、法が本気で法であるという部分が分かっていない点ではないだろうか。そこにあるコトバは嘘ではなくて、事実で、大事で、実践されなければならない、という信頼感とか忠誠心がかけていると、法律は何の効力も発揮しない。という部分にだけいつも目をやってしまう。

例えば近所の交差点にはわざわざ「信号を守りましょう」と書いてある。ほとんどの人がそこの信号を守るべき法律だと思ってやしない。この辺の人にとって左右を見て何にも来てなかったら信号なんて無視して道は渡るものだ。だから改めてこの信号が守るべき決まりだと言わねばなるまい、ええい、信号というコトバが通じないなら別のメディアでもっていいかえてやるという神奈川県警(?)の意気込みを感じる。

信号だけでなく他の場面でもそれが決まりや法律だということを無視して生きていることは多い。キセルとかネコババとか日本だったらそこそこ悪いと思われていることもあるけど、サービス残業や子どものしつけのための体罰についての決まりなんてあったっけ?って感じじゃないだろうか。原則として人は傷つけたり殺したりしてはいけないが、いくらでも殺して構わないとされる場合のあることも私たちはよくよく知っている。

しかし、心の底ではそんな○○法なんてただのコトバじゃないか、単にそれを信じてる人が大事にしているだけじゃないか、と思ってはいても、私ごとき真正面からただのコトバに影響を受けてしまうことに変わりはない。どうやってもここに生きてる限り、これは○○法に則っているのだ、だから正当なのだ、だから戦争するのだ、死刑もするのだ、退去強制できるのだ、という理屈を受け入れるしかない立場にいて、政治に無関心な世代の私は何も変わらないことに文句もないし、変わるとも思っていなくて、期待も何もしていないつもりでいる。それなのにあるとき突然のようにショックなことが起こったりする。失望して初めて、ああ私は別の未来を期待していたのだと気がつく。信号を無視しても私は大丈夫だって、他の人も事故に遭わないって思ってきたことに気づいたり、信号のない場所で事故があったら信号があったらよかったのに、と思ったりする。

どれほど多くの人が決まりを守るべきと思い、決まりを守ってきたか分からないけれど、それでも決まりや法律や制度は確かにあって、何か不都合は起こったときには権力はそういうコトバを引き合いに出すし、決まりを守っていなかったとしたらそれを責められるだろう。逆にそういうコトバをよりどころにして弱者側にいる人間が自分の権利を主張し強者側の責任を追求することもできる。
私は何事につけ開き直れるわけではないし、これからずっと失望しないでいる自信はないし、ある種の希望をいまだ捨てていない。確かに冷めていて、でもどこか冷め切っていないのだと思う。

Text by Janis Cherry
  • ライタープロフィール
    付記:憲法なんていうごたいそうなものが変えられてしまうかも、ということに関連して、法律には全然興味ないと言い続けるのも何だか違うので書いてみました。





  • 男女平等を憲法から消すな!STOP!憲法24条改悪キャンペーン
    http://blog.livedoor.jp/savearticle24/
  • 「セミナー6月5日@東京「同性パートナーシップ」から婚姻制度と家族をかんがえる」
    http://blog.livedoor.jp/savearticle24/archives/22358181.html


    日本国憲法第24条の文言はフツーに読んで男と女のことだし、フツーに読んで異性愛のことだし、フツーに読んで一対一の関係だし、自分はおそらく直接の構成員にならない二人組の平等を語っているには違いないありません(誰がどう言おうと私はそうとしか読めませんから、ええ)。だからといって条文の精神までがより不平等な方向に向かうのはよくないとも思っていて、この部分で私自身この運動をしている人たちと問題意識を共有しているんじゃないかと思っています。
    キャンペーンについての詳しい説明はウェブサイトをご覧ください。

    19.05.05
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