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"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」エッセイ ->> イトー・ターリ体験記
イトー・ターリ体験記 先週公演されたイトー・ターリ 最新版『虹色の人々―私と私が愛する人のために撹乱する行為。あるいはファンタジーな物語。―』のお手伝いをやってみた。 おもに、当日の会場設営と、パフォーマンス中のプロジェクター係。 私にとって、パフォーマンスアーティストといえばずばりイトー・ターリその人であり、パフォーマンスアートといえばずばり『虹色の人々』そのものである。なぜかって?それは、私が『虹色の人々』以外に、後にも先にもパフォーマンスアートというものを見たことがないから… そんなやつにかぎって、アートという言葉が大好きで、ターリさんというアーティストが自分の知り合いにいるという事実がうれしくてたまらない。「ターリさんにパフォーマンスの手伝いを頼まれた」などとさも誇らしげに吹聴してまわったりするのだ。 が、実は内心びびりまくっている。 パフォーマンスの間、2回ほどプロジェクターを起動させてビデオを映し出さなければならない。元来、本番に弱いという私にとって、失敗が許されないというプレッシャーを二日間も味わうわけだ。しかも、自分の失敗はターリさんが被ることになる…沈。 結果的にはつつがなく事を終えほっと安心のわたくしでした。 私にとって「ターリさん」と「イトー・ターリ」はまるで別人である。 普段「ターリさん」ばかりを見知っていて、突然「イトー・ターリ」を見ると驚く。「イトー・ターリ」は、攻撃的で失敗をものともせず、果敢に新しいことに挑戦しまくる。頭の先から足の先まで神経をはりめぐらせ、その姿は自信に満ち溢れている。が、いったんステージを降りると、「あはっ」と照れ笑いを浮かべながら、いつもの柔和なターリさんに戻るのである。 柔和な「ターリさん」からパフォーマンスの手伝いを頼まれ、私は二つ返事でそれを引き受けるのだが、いざプロジェクターを起動させる時、目の前にいるのはライオン「イトー・ターリ」なのだ。詐欺である… それにしても、だ。 少し心に余裕が出てきた二日目、まじまじと「イトー・ターリ」をながめてみる。そこで私は、「イトー・ターリ」が紛れもなく「ターリさん」から出現しているという事実を、やっぱり認めないわけにはいかないのである。日常のささいなことをもパフォーマンスのヒントにするべく神経をはりめぐらし、生活の様々なできごとをアーティストの肌で感じとり、その頭で考え、思いめぐらし、それが「イトー・ターリ」となるのである。 私は、「イトー・ターリ」から、再び翻って「ターリさん」という人物を知るのである。 アートのアの字も知らないような私に、高いバイト代を払ってプロジェクターの手伝いを頼むターリさん。遠慮がちに、申し訳なさそうに仕事を頼むターリさん。本番前なのに、力仕事も全部自分でやってしまおうとするターリさん。お昼のお弁当も夜のお弁当も食べさせてくれるターリさん… 「イトー・ターリ」を最初に見たとき、そんな「ターリさん」が思わず「豹変」したのかと思ってしまった。でも、ほんとはちがうのだ。「ターリさん」も、やっぱりライオン「ターリ」なのだ。 超重要なプロジェクターの操作を機械音痴の私なんかに平気で頼めるのは、ターリさんにとって「失敗」という文字が存在しないからなのである。 どうにかなるさ…なったとき考えればいいさ… どっしりとかまえたライオンが、そこに座っている。 私が万が一プロジェクターの操作を誤ったとしても、「イトー・ターリ」は、それすらもパフォーマンスとして遊ぶのだろう。そして、そのことを「ターリさん」はわかっているのである。それほどの自信が「ターリさん」にあるのは、この人の中で日常のすべてがアートとして見えているからなのだろう。 この人をやっぱり「アーティスト」と呼ぶのだろうと、アーティストを見たことのない私は、思うのである。 Text by Yamamoto << 関連URL・記事 >> http://www.pafspace.com/ イトー・ターリさんが主宰するスペースのウェブサイト。最新のパフォーマンス公演情報もここに掲載されます。 http://tummygirl.exblog.jp/530965/ 2004年6月の公演レビュー。FemTumYumより。 http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/040629b.shtml (Janis) 06.04 PA/F SPACE の紹介記事。 15.03.05 Copyright © 2002-2008 "iratsume." All Rights Reserved. |