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どこに帰ればいい?

イラン人ゲイ男性が日本に難民として亡命申請したが強制送還されかねない、というのでオンライン署名が集められている。もう3年続いている行政裁判なので、知っている人も多いと思う。(参考:チーム S・シェイダさん救援グループ[追記1]

色々読んで私が理解したのは、イランでは、自分が同性愛者だと「言わなければ」殺されないそう、ということ。おお、「言わなければ」よいのですね。では、「知られていたら」…たぶん殺される。少なくともものを言う自由らしきものはなくなるでしょう。
もしも日本政府が送り返したら、難民条約批准しているくせにそれに違反してるんだけど、もし日本政府が一個人の人権を脅かしたりしたとき、誰が訴える?どこに言えばいい?誰が助けてくれるだろう?

そこで日本国内であれば、人権救済申立制度なるものがある。人権救済申立制度を使えそうな事例は以下。(参考:大阪弁護士会のウェブサイト
  • 刑務所・拘置所での処遇(通信・面会の制限、適切な医療が受けられないこと、不当な懲罰その他)
  • 警察の取調等(違法な逮捕・捜索差押、取調の際の暴行脅迫、自白の強要等)
  • 精神病院での処遇(違法な強制入院、暴行等)
  • 雇用の場の問題(雇用主による名誉侵害、職場におけるいやがらせ)
  • マンション居住の障害者への自宅配達問題
  • 人事委員会・公平委員会における人事委員・公平委員の除斥・回避
  • 監査委員の監査結果公表における請求人のプライバシー侵害
  • 新聞の書評による名誉侵害

    誰かが同性愛を治療しようとあなたを入院させたりしたときも使えますね。(治らないという以前に)「違法」であることが明らかだったら、あなたが自分自身や他人を「病気」であるがために傷つけるのでなければ、強制入院なんてありえない。あと、同性カップルが不動産を共同名義にできなかったときもこの制度を利用すればいいんだそう。

    明文化された法律や制度の前提条件になる、慣習や伝統や宗教や、迷信や差別感情にひっかかるとき、法律や制度の運用なんて関係者の一存で悪用されるし誰かの人権なんて至極簡単に無視される。成立経緯や精神がどれほど崇高でも忘れられる。
    その上、時と場合によって、法律に書かれた平等で人権が保障されている人間さえ、成人男性のことだったり、非犯罪者だったり、日本国籍保有者だったり、某大学出身者だったり。

    法律はもちろんニュースを読んでいるとき、それで女はどこにいるんだろう?レズビアンはどうしているだろう?アジア人だったらどうなるんだ?と思うことがある。「私」の立場だったらどうなるんだろう?と思うこともある。

    それで、イラン人レズビアンはどうしてるだろう、ふと思い立って調べてみた。
    The GULLY というオンラインマガジンの中で、「イランで唯一のレズビアン」という記事を発見。"The Only Lesbian In Iran." (January 23, 2002)

    米国在住イラン人の彼女は、米国イラン人コミュニティとの関わりがほとんどないと言う。
    レズビアンだと分かる見た目でいれば、奇異の目で見られる。家族や親戚など、イラン人コミュニティの中でレズビアンである自分に居場所はないし、一方で中東出身と見える住民に対する米国内の感情はここ数年酷く悪化したから、ここにイラン人の居場所はない。見た目に分かりやすくレズビアンでありたいなら、米国はイランよりましではあるけれど。

    この記事を読んで、私自身が持っている、帰る場所のない感覚に、すごく近くて、仲間を見つけたような気分でいる。

    ある場所では自分の人権が守られていると感じられるとき、自分はそのコミュニティに属している、自分のアイデンティティはここにあるという感覚があるのだと思う。

    としたら、私のアイデンティティの中で、民族アイデンティティや出身地アイデンティティがどう位置するかと言えば、ないに等しい。私には私が所属できそうな民族特性を共有するコミュニティはないし、出身地特性を共有する人たちの住む土地もないということなんだと思う。

    宇宙の片隅に捨てられたコドモ感覚をずっと持っているのに、言語と出身地一つでアイデンティティを他から押し付けられるのは真っ平だといいたくなる。でも、そんな風に法律も制度も、人も動いてはくれないんだけれどね。私には住む場所だって選べない。


    Text by Janis Cherry
  • ライタープロフィール






    <<参考URL>>
  • チームS: シェイダさん救援グループ
    http://www.sukotan.com/shayda/shayda_top.html

     
  • UNHCR Japan: 国連難民高等弁務官事務所
    http://www.unhcr.or.jp/
  • 日本の難民保護 2002年5月
    http://www.unhcr.or.jp/protect/hogo_japan.html

     
  • 入国管理局<法務省
    http://www.moj.go.jp/NYUKAN/index.html
  • 法務省
    http://www.moj.go.jp/

     
  • Yahoo!JAPAN ニュース 出入国管理
    http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/immigration/

     
  • 人権救済申立制度(大阪弁護士会)
    http://www.osakaben.or.jp/02_aboutus/katsudou_01.html

     
  • The GULLY
    http://www.thegully.com/
  • "The Only Lesbian In Iran." (January 23, 2002)
    http://www.thegully.com/essays/gaymundo/
    020122_iranian_lesbian.html

     
     
    2003年12月4日追記:
  • 人権侵犯事件 (北北海道人権啓発ネットワーク協議会のウェブサイトから)
    http://www.jinken.go.jp/asahikawa/asahikawa_sinpanjiken.html.htm

     
     
    2005年4月8日追記:
  • シェイダさんの長い闘い、ついに終わる〜2005年3月30日、欧米先進国に第3国出国〜
    http://www.kt.rim.or.jp/%7Epinktri/shayda/3rd_country.html

     
     
    19.11.03
    07.04.05 updated
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