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何かしら人権月間

当ゲストブックでも話題になった、2003年6月ニュージャージー州で起きた、レズビアンの少女が殺されたヘイトクライム(憎悪犯罪)事件の余波は、小さく収まってしまった。ゲイコミュニティの主要な「人権」団体のうち、ごく一部しかこの事件に反応しなかったという。被害者の彼女は黒人で、黒人コミュニティ(実質「性」について非常に保守的なバプティスト系キリスト教教会を中心としたコミュニティ)のサポートがほとんどなかったことももちろんあるのだけれど、レズビアン・ゲイコミュニティ内での黒人に対する人種差別が最大の原因であることは確実。[1]

複数の要素でマイノリティに属する人の人権がどうしても無視されがちだという教訓になればいいのだけれど。

ところで、合衆国では「全米…月間」と月ごとに名前が付いていることがある。3月は女性の歴史月間、6月はゲイ人権月間という具合。

2000年6月には、クリントン大統領(当時)が6月をゲイプライドの月だと米国大統領としては初めて明言したことで話題になった。
どうして6月かといえば、NY のストーンウォール事件が6月にあったからだそう。この事件を契機に、ゲイプライドのお祭りも始まって、今でもやっぱり6月に行われるゲイプライドは多い。

他には2月アメリカ黒人の歴史、4月性暴力の啓発、5月アジア太平洋人(系)遺産(heritage)、9月から10月ヒスパニック(系)遺産、11月ネイティブアメリカ人(系)遺産という風に、毎年その時期になるとテーマについてもっと知識を広めよう、身に付けよう、といってはなんだかんだと各地でイベントがあり、本屋ではブックフェアがあり、図書館の関連本がずらっとそろえられ、パネルで分かりやすく説明したものが表れる。それまでから自分の興味があったことも、興味がなかったことも、とにかく分かりやすく伝えますよーという気持ちが嬉しいのだ。

しかし、同時にこういう月間でもなければ、マイノリティの人権は無視されがちであることも分かっている。ブラックジョークで、月毎の…月間を挙げてみせて、「ところで他の月は?―差別、差別、差別、差別」なんてのがあったことを思い出す。

明日9月14日、札幌ではレインボーマーチが行われる。偶然にも(?)今日、書店で「レズビアン&ゲイ ブックフェア」なるものを発見(ちなみに紀伊国屋書店川崎店ではあと一ヶ月くらい続けると教えてもらった)。このブックフェアの公式サイトは特にないようで、初回の昨年と比べると規模は小さくなったのかもしれない。ネット上に残念ながら今年の参加書店リストは見つからなかった。
でもでもあなたの行きつけの本屋でやっていないか聞いてみてください。もしもそこにレズビアン関連書籍をおけるような棚がなかったらリクエストしませんか。レズビアン本がずらりと並んでいるだけで勇気付けられる人もいると思う。私がそうだったように。


Text by Janis Cherry
  • ライタープロフィール






    <<参考URL>>
  • Lesbian stabbing coverage draws cries of bias (The Associated Press; August 14, 2003)
    http://www.planetout.com/news/article.html?2003/08/14/4

    レズビアンの少女、Sakia Gunn が殺された事件の余波が小さかったことについての記事。

  • National Women's History Project
    http://www.nwhp.org/
     女性の歴史を掘り起こすプロジェクト
  • Women's History Month - March 2003
    http://www.nwhp.org/whm/themes/theme03.html

    今年のポスターや、表彰された人たちについて。

  • Clinton declares June Gay and Lesbian Pride Month (June 7, 2000)
    http://www.q.co.za/news/2000/06/000607-clinton.htm

    2000年6月クリントン大統領が行ったゲイプライド月間についての演説内容など。

  • 第7回 レインボーマーチ in 札幌
    http://www.rainbowmarch.org/


  • レズビアン&ゲイ ブックフェア 2003 (テラ出版『バディ』のサイトより)
    http://www.badi.jp/editors/i030811/i030811.html


    2003年11月17日追記:"Erasing Sakia: Who's to blame?" By Kelly Cogswell and Ana Simo (June 6, 2003)
    http://www.thegully.com/essays/gaymundo/030606_sakia_gunn_murder.html

    サキア・ガン事件についてのメディアやコミュニティの反応について。
    一つは、メディアが誤って伝えたことがある。加害者が買春を持ちかけたのを自分はレズビアンだからと断ったために殺されたと伝えられたがそれは間違いで、被害者とその友人たちがゲイだと分かっていて、加害者は話を持ちかけ、断ったのを理由に殺したのが事実であるとのこと。
    また、黒人の市長の無反応、在学していた高校が生徒たちが事件後活動するのを(実質)禁じた理由はホモフォビア(同性愛嫌悪)としか考えられないと書いている。


    13.09.03
    17.11.03 updated
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