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痴漢は犯罪で、しかも社会問題です

日本の空き巣被害調査では、一軒家の五倍の頻度で集合住宅(アパートなど)が狙われている。だからって、みんな一軒家に越せとは誰も言わない。もっと安全な国に引っ越そう、とも言わない。盗むほど金に執着があるくらいの方が正常、最近のフリーターは覇気が足りない、とはどの政治家もまだ言ってないようだ。
盗難に遭わないように玄関の鍵を変えたり、ガードマンを雇ったり、セコムの機械に見張らせたりするけれど、狙われる方の油断や隙がそうそう取りざたされはしない。誰でも、他人の家に無断で上がりこんではいけないことになっているからだ。財産権だの所有権の尊重というのは資本主義社会の常識ですから。ええ。

ところが、例えば、引ったくり被害者の圧倒的多数は女である。[1]

たぶん、襲われやすい要素はあるに違いない。例えば、比較的体力のない、スローなスピードで自転車に乗っていてバランスの悪い中年女は被害者になりやすい。これは襲う側にとって都合のいい相手が選ばれているということ。そんな標的となるオバチャンたちは割と多かったりして、引ったくりとは大金を持っている少数の人が狙われるのでは、まずない。

自分たちが、犯罪加害者にとって、都合のいい被害者でなくなっていこう、とは思う。なんてひどいことをするんだ!と怒って当然だし、とっ捕まえて説教してやるって気でいる。どうやったら同一犯による再犯や似た犯罪がなくなるか、誰が被害者になっても(そして誰が加害者になっても)センセーショナルな扱いだけじゃなくて、マスコミだってちゃんと頭使って伝えて欲しい。

純真無垢な子どもが殺された事件だけではなくて、死に掛けの底意地の悪い婆が殺されても。純真無垢なはずの子どもが犯した事件だけではなくて、前々から評判の悪い大人が犯しても。

だって暴力加害って、個人的な落ち度を責めるばかりでは、なくならないもの。ドメスティック・バイオレンスの問題もそうだし、セクシュアル・ハラスメントだって、子どもに対する虐待だって、一人一人のレベルとは別立てで、社会レベルの話をしているのは、個人レベルだけでいくら頑張ってもどうしようもない(だろう)と認識されているからだと思う。

日本の社会問題として痴漢犯罪は捉えられるようになっているだろうか。まだ、えん罪が出てしょうがないような甘い摘発しかできない警察の力不足や裁判の制度にも何か問題があるだろう、罰金払わせてそれで同じ人に再犯させなくなっているのかも、実際怪しいと思う。

けれど痴漢は犯罪で、しかも社会問題です。その認識がまだ共通ではない理由は、実態が判明していないからでもあると思うから、わたしは当分アンケート調査をしつこくやっていくつもりです。あなたの周りの人にも、アンケートに回答協力を呼びかけてもらえるとすごく嬉しい。待っています。


Text by Janis Cherry
  • ライタープロフィール






    <<参考URL>>
  • 痴漢犯罪についての調査のためのアンケートを集めるウェブサイト
    http://selfishprotein.net/chikan/


    2003年12月22日追記:
    被害者の95%は女性 警視庁のひったくりまとめ (共同通信)2000年12月12日

     東京都内で十月に発生した約四百件のひったくりのうち、被害者の95%が女性で、バイクを使った犯行が73%に上ったことが十二日、警視庁生活安全総務課のまとめで分かった。
     まとめによると、被害者の59%は歩行中で、41%は自転車。歩行者の場合、83%は盗まれたバッグなどを車道側に持ち、自転車の被害者の98%は前かごに所持品を入れていた。
     被害者の年代別では、二十代が24%と最も多く、次いで七十代以上の17%。発生時間は午後六時から午前零時までで45%を占めた。
     女性はバッグなどに携帯電話を入れて持ち歩いているケースが目立ち、一一○番が遅れることも多いという。
     十一月までの東京都内のひったくりは、約五千三百件と前年同期に比べ約二百八十件の増加。生活安全総務課は「バッグを車道側に持たない、自転車の前かごには防犯ネットを取り付けるなどの対策を呼び掛けたい」としている。(了)


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