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女子の人権国際条約

アメリカってば、「女子差別撤廃条約」(=「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」=略称:CEDAW [1])を批准してないんですね。というのは、先日アムネスティUSA (www.amnestyusa.org)がメールでやいのやいのと教えてくれたのですが、うっかり存在を忘れていたこの条約のことを思い出しました。

条約そのものは1979年に出来、日本は1985年に批准。成果の一つとして1986年、かの有名な男女雇用機会均等法に反映されています。
しかし実態はといえばフルタイムワーカーの男女に賃金格差があるのはもちろん、女性労働者の多くを占めるパートタイム労働者とフルタイム労働者の賃金格差だってあるわけで、あえて比べるまでもなく日本在住の女性の労働状況はどう転んでも悪い(タメイキ。ただ男性のそれが良いとはいいません)。フルタイムワーカーの話だと、住友の昇給格差訴訟について、中でも一般職と総合職に分けた求人で性差別をオッケイにしてしまうやり方がアムネスティUSA のページでも取り上げられていました(批准済みの各国でどんな風に「女子差別撤廃条約」が生かされているかという報告ページ http://www.amnestyusa.org/cedaw/cedawhow.html)。

あと、日本では配偶者控除を受けるための年収制限があり。結婚しているカップルの一人がバリバリ稼いでて、もう一人がちょっとだけ稼ぐと税金が得になるという。二人がバリバリ働くより得なこともある。

それで、その制度を利用するために低賃金に甘んじてくれる他の候補がいたら、きちんと給料がほしい人は逆に、雇ってもらえない。この前教えてもらったのですが、DV被害者が夫と別れた場合なんかの雇用状況はそんなこんな理由があってやっぱり非常に厳しくて、結果別れられなかったりするらしい(涙)。
だからって、配偶者控除なくしただけでは、女がいっぱい働くようになって、いっぱいお金がもらえて、万々歳、てなことにはならないらしい。(特別控除は2004年から廃止、配偶者控除も廃止の方向)

大体なんでみんな結婚するのだろう。
そりゃあ昔は大変だったらしいじゃないですかあ、でも今は結婚しなくてもいいんじゃないですかあ…。税金の控除や特別手当なんかの経済的な利益だけ考えて結婚してる、訳ない?

さて気を取り直して、と。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准している日本ですが、賃金格差だの職場での性差別だのって分野だけでも過去のニュースがちょっと検索するだけで出てくること出てくること。

10年以上前の話ですが、アルバイトの面接で実は女の子は取ってないと言われ、でも雇用機会均等法があるから募集広告に「男子のみ」とは書けなかったと言い訳され、断られたことがあり。なんかこれって、法律の意味がないというか、違うって思ったのよね。慣習化された性差別があっても、上司とぶつかりながらでもそこで働きたいか、働けるか、と問われれば即行で逃げ出す私。こういう仕打ちを受けてやる気なくすのは、私の個人的な性格だけじゃないと思うんですよ。

私はなるべくなら、訴訟なんぞ起こしたくないし、なるべくなら、悪いことしてる人は自分で気づいて欲しいし、なるべくなら、何も言わずに改善されて欲しいけれど、状況を変えるために必要な行動ってのはあるのよねえ(しぶしぶ)。

Text by Janis Cherry
  • ライタープロフィール






    参考記事1 : 女性パート給与、正社員の64%…格差拡大 (読売新聞)2003年3月28日
     厚生労働省が28日発表した、2002年版「働く女性の実情」によると、昨年の女性パートタイム労働者の平均給与は女性正社員の64・9%だった。
     前年より1・5ポイント減で格差は拡大した。パート労働者の平均時給は891円で、女性正社員の所定内給与を時給に換算すると1372円だった。
    [2003-03-28-18:54]

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    参考記事2: 「勝利解決だ」と強調 原告ら、安どの表情も 既婚者差別訴訟 (共同通信)2002年12月16日
     「赤ちゃんが生まれるまで職場にいて、復帰することが普通になった」。住友生命保険の既婚者差別訴訟が大阪高裁で和解した十六日、大阪市内で会見した原告らは、和解を「勝利解決だ」と強調するとともに、訴訟を通じて既婚女性が働きやすくなったことへの安どの思いを口にした。
     「女性たちが働き続けるために立ち上がり、築いてきた一里塚として歴史を刻むものだ」「結婚・出産後も働く女性が増えたり、既婚女性が昇格したりしている」
     弁護団の原野早知子弁護士の力強い言葉に、支援者から贈られた手作りの黄色いバラの飾りを胸に着けた十二人の原告が何度もうなずいた。
     七年前、「男性の結婚は祝福されるのに、女性が結婚すると差別や退職を強要される」と憤り、訴訟に踏み切った。原告のうち、既に七人が退職、残る五人も二年以内に退職を迎える。
     「子供を持つ母親が職場に増えてきた」と喜ぶのは、現役の市野千衣子さん(59)。来春、職場を去る原告団長の渡辺康子さん(60)も「長い闘いだったが、この和解を働いている人たちにバトンタッチできる。ほっとした」と目を細めた。(了)
    [2002-12-16-15:51]
  • 上記と同じ内容: 昇進差別訴訟 住友生命と女性社員、9000万円で和解 大阪 (毎日新聞) 2002年12月17日

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    参考記事3: どう考える 配偶者特別控除廃止(神戸新聞)2003年1月9日
    ◇西宮市男女共同参画センター 小川真知子さんに聞く◇

     専業主婦世帯への優遇策ともいわれる配偶者特別控除が、2004年1月に廃止される。「家計が一層苦しくなる」「女性の社会進出を促すのでは」などの賛否両論がある中、女性学の視点で社会制度を検証している西宮市男女共同参画センターの情報・企画担当、小川真知子さんは「損得勘定を超えて、この機会にどのような税制や社会を目指すべきか考えませんか」と呼びかける。(小林由佳)
    制度と現状に「きしみ」/働き方を見直す機会に
    ◆千二百万世帯に影響
    ◆だれが得してる?
    ◆過労死のない社会に
    記事全文はこちら http://www.kobe-np.co.jp/kurashi/kaigo171.html

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  • 日経スマートウーマン 女性関連ニュース リンク
    カテゴリーに分かれているので使いやすい。







    <<参考URL>>
  • Amnesty International
    http://www.amnesty.org/

    1960年代UK発 国際的な人権擁護団体で政治犯救済、死刑廃止、難民救済活動が有名。
  • Ratify the Women's Human Rights Treaty
    http://www.amnestyusa.org/cedaw/index.html

    アムネスティUSA による、米国政府による「女子差別撤廃条約」の批准を求めるサイト。
  • アムネスティ・インターナショナル日本
    http://www.amnesty.or.jp/


  • 内閣府男女共同参画局
    http://www.gender.go.jp/

  • 「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」 全文 日本語 日本政府訳
    http://www.gender.go.jp/teppai/joyaku.html


  • Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women (CEDAW)
    http://www.un.org/womenwatch/daw/cedaw/index.html

    国連から、「女子差別撤廃条約」についての情報。

  • 法令データ提供システム (総務省 行政管理局)
    http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

  • 「男女雇用機会均等法」
    =「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47HO113.html


  • 平成14年版働く女性の実情 女性労働白書 (厚生労働省雇用均等・児童家庭局)
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/03/h0328-3.html


    03.06.03
    Uploaded by Janis Cherry

    [1] CEDAW の題名日本政府訳には批判あり。最初は「婦人」で非難にあったので、今は「女子」と訳されているとのこと。確かに women の訳語を何故「女性」にはしないのかという疑問は残る。
    条約本文中に女性とは結婚していない女性(女の子ども)も含めるという断り書きのある部分が多いのだが、日本語の「女性」は成人女性に限定されることがほとんどなので「女子」という訳語はあながち的外れではないとも感じている。
    また、この部分「女子」という言葉に「大人の」女性たちが引っかかるのは、女性と同様「子ども」もまた弱者で差別対象だから、「子ども」などと「大人の」自分たちが同一視されるのは不本意であるという、結局社会全体の持つ「子ども」たちに対する差別意識の表れとも、私は感じている。
    それで、私自身は敢えてこの文章中、条約名の women 日本語訳を「女性」ではなく「女子」のままにしている。
    以上、ご了解ください。



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