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ドメスティック・バイオレンスをめぐって(3)

そんなこんなでDVネタばかり書いていますが、実際のところ親密な関係における暴力加害ってのはストレートだけに限らない。男女問わず、異性間に限らず、加害者になっちゃうのよ。しかも、その割合はゲイコミュニティ内のいろんな調査でも、やっぱ25%を超えるという話で、異性間とそんなに差がない。
ただ、異性間カップルでは加害者はまず男性だから、この社会ってヘテ男の育て方を完全に間違ってるんだろうね。

他に異性カップル間のDVと、違いがあるとしたら、ゲイ(男女とも)カップルでは、ゲイとしてのアイデンティティを関係に頼るところがあったり、いろんな理由があって被害を公にできなかったりするところ。

被害が公にならないってのは、誰かが助けてくれる訳じゃない、というのが大きいと思う。もちろん、ゲイのための電話相談とかあるわよ、でも特にDVに焦点を当てたゲイ向けの電話相談はそうそうない(日本であったら教えてくれ)。
シェルターと呼ばれる緊急避難場所も、ない。レズビアンも女性向けのシェルターに入れるとして、シェルターの職員は同性愛に理解があるかしら。他の利用者は、レズビアンを差別したりしないかしら。心配。
そもそもDV防止法は異性間しか考えてないから、公的な援助を受けることは難しい。異性間であっても裁判所に保護命令を出してもらって、たった2週間で荷造りって厳しいんだけどさ。
ゲイカップルに、子どもがいたらいたで、それがネックで我慢するしかなくなってるかもしれない。血のつながりがない側の親権は、別れた瞬間から無視されるだろうしね。

性犯罪については同意のない性行為が暴力=人権侵害という観点ではなく、女性の貞操や社会風俗がどうこうという話でしか日本の刑法は論じてない。
アメリカなんか変なところでまだまだ最悪で、同性間のセックスそのものが今でも違法だったりするんだから!その「違法」セックスを使ってレイプしたら、そりゃあ、犯罪にはなるし、一時的に助かるかもしれないけどさ、問題が大きくずれて訳の分からないことに。

それに、法律ではチンコがなかったらレイプにならなかったり、性犯罪とは言ってもレイプか否かで刑の重さが変わっちゃう。
The New York City Gay&Lesbian Anti-Violence Project サイトは、広めのレイプ定義を採用して、法律がどうであろうと、被害者の味方だって、ちゃんと言ってくれてる。http://www.avp.org/

それからストーカー行為。ファンとアイドルの関係みたく思われることが多いけど、DVがらみが実は主流。多くの女性が、(元)夫や恋人に付けねらわれ、傷つけられ、殺されている。
日本のストーキング犯罪についての法律に性別は限定されてないけど、自分の元カノが追い掛け回してるから助けて欲しい、って本当に危険な状態になる「前に」警察に相談できる?警察に言わなかったら、誰か言える人が他にいる?

落ち込むようなことばっか言われたり、人前で恥をかかされたり、イジメと言ってもおかしくないようなことされたり、経済的に縛られてたり、すっげー嫉妬深くて身動きが取れなくなってたり、友達を作ったりどこかのサークルに入るのにいちいち相手の許可が必要だったり、大事なものを壊されたり、勝手に使われたり、実際に殴られたり蹴っ飛ばされたり、やりたくないのにセックス強要されるだけじゃなくて、こういうのもみーんなDVになりえる。
自分の身体や心のプライベートな領域に、ずかずか踏み込まれることを暴力っていう。それって、自分が見下げられる行為で、人権侵害されてるってこと。

でも、自分がいなければこの人はだめになるって(これ、本当だったりするから深刻なんだけど)別れる選択はできなかったりする [1]。自分が直接は殴られなくても、自傷・自殺予告されたりしたら、相手の言いなりになるしかなかったり。
こういうの、レズの私なんて大得意だから困るんだけどさ(冗談にならないって・怖)。

あとは、相手の言うとおりにしなかったら、アウティングされるってのも、人によっては怖いと思う。そうなると泥沼ってやつですか。ずるずる。

相談しようと思っても、コミュニティが狭くて、どうしようもなかったりさ、加害者も被害者も活動家だったりして。あー、相当ストレス。

加害者になる人は何もストレートだけじゃないし、男性だけでもないし、こういう社会的地位の人とも限定できない。外ではいい人でも、ウチではいい人じゃないことがある。

げっ、これって昔の私?と思った、そこのあなた、こんな風なことから始めればいいんじゃないかしらって、他人の振りしてコミュニティに提案してみませんか。 もちろん、動ける人は常に求められているし、あなたが電話相談でも始めればみんな喜ぶとは思う。ただ、今すぐには行動できなくて、ずっと話を聞く側だったとしても、まずは身の回りでDVを話題にしてみない?問題提起して、そして対策を考える。

何より、もしもあなたが今現在DV被害者だったら、どうやって生き延びるかがすごく大事。行き詰ったら誰かに相談して、相談する先がなかったら、うーん、いらつめに聞いて。味方になります、はい。

Text by Janis Cherry
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    <<参考URL集>>
  • The New York City Gay&Lesbian Anti-Violence Project
    http://www.avp.org/


  • "STOP Domestic Violence Program" Los Angeles Gay&Lesbian Center
    http://www.laglc.org/section05/S0512.htm


  • Community United Against Domestic Violence (San Francisco, California)
    http://www.cuav.org/


  • Same-Sex Partner Abuse (Toronto, Ontario, Canada)
    http://www.womanabuseprevention.com/html/same-sex_partner_abuse.html


  • Life on Brian's Beat -- gay-on-gay violence -- (useful resources and more links)
    http://www.web.apc.org/~jharnick/violence.html


    [1] 加害者との関係がセラピー的であると、被害者が離れるのがより難しい。女性ジェンダーの、他人の世話を引き受けるようにという育てられ方が裏目にでる。でも、DV被害下に陥ったら、自分の世話は自分で、他人の世話は他人がと割り切って、加害者よりもまず自分のことを優先しましょう。


    2003年9月25日追記:「レズビアンカップルのドメスティックバイオレンス」presented by レズビアン DV を考える会 << フリーペーパー・ミニコミ出版紹介 07.09.03


    24.04.03
    25.09.03 updated

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