:: 新着 :: :: 分野別一覧 :: :: イベント :: :: エッセイ :: :: いらつめ人 :: :: ライター一覧 :: :: 説明 :: :: 連絡先 :: |
"iratsume" ->> Nihongo ->> 「分野別」ビデオ・DVD紹介 ->> 日本未公開作品 The Laramie Project
Laramie Project / Ws [Import] U.S. 定価:$14.98 amazon.co.jp 価格:¥1,776 DVD; Region 1(米国、カナダ向け ※日本国内(Region 2)用のDVDプレーヤーでは再生できません)NTSC; 海外版; ASIN:B000067D0Y; (06/2002) HBO Films - "The Laramie Project" Home(映画に関する情報) http://www.hbo.com/films/laramie/index.html 2002年サンダンス フィルム フェスティバル(独立系映画の登竜門とされる映画祭)の初日に発表された。もともとは 3 時間の舞台だが、映画では 96 分になっている。 * 1998年10月6日、合衆国ワイオミング州の小さな町ララミーで、若い男性が意識不明の重体でフェンスにくくりつけられているところを、自転車で偶然通りかかった人に発見された。マシュー・シェパード、21 歳、ワイオミング州立大学政治学部一年。18時間、野ざらしにされ、涙のたどった跡以外は血で覆われていた。すぐにコロラド州の病院に運ばれたが 12 日未明、死亡。 犯人はララミー出身の 20 と 21 の男二人。動機はひとつ、マシューがゲイだったからだ。皮肉にも第一発見者にとってマシュー・シェパードは彼が生まれて初めて見たゲイだった。 その一ヵ月後、ララミーに NY の劇団のメンバーが新作の題材とするための取材に訪れる。その成果である The Laramie Project は、ララミーの住民たちへのインタビューを元にしたドキュメンタリーに近いドラマ(登場人物は実名だが、すべてプロの俳優が演じている)。 ウェスタン映画の舞台になりそうなララミーの人口はわずか2万6千人。このプロジェクトだけでも 200 人以上にインタビューしているが、事件後メディアに質問された人はかなりの数に上る。 ニューヨークから来た劇団のメンバーのうち、3 人はゲイ。事件直後に来るにあたっては不安がもちろんあったようだ。何しろ保守的な土地だということははっきりしている。それなのに、それだからか、ララミーの人たちは誰かがゲイでも「気にしない、」という。別に、どうということもない、という。でも理解できない、ホモセクシュアルというライフスタイルには同意しかねる、間違っている、主は怒ってらっしゃる、ともいう。特別な権利を一部のグループに認めるのは反対である、と憎悪犯罪についての法律には反対する。 住民の一人は言う。「異性愛者が亡くなっても小さな記事にしかならないのに、殺人事件は他にも起こっているのに、なぜあの事件だけがこんなに取りざたされるのか。」 「私は同性愛に反対である。」「あんな風に誰かを殺す権利なんて誰も持ってない。」インタビュアーが返す。同性愛を嫌いだという理由で殺されたのですよ。「同性愛は間違っているよ。」 ある宗教家はこうも言った。「マシュー・シェパードが意識を無くす前に、彼のライフスタイルがどういったものだったか思い返していたことを願います。」 マシューが収容された病院で、マスコミの前に立った両親の代理人はマシューが亡くなった日の会見で、(マシューの母である)ジュディ・シェパードに代わって自分が読むことになった彼女の文章を目にして泣いてしまう。彼自身の娘たちのことを思い出し、ジュディには息子がいないことを思って、こみあげてきたものを抑えられなかったのである。 "Go home. Give your kids a hug. Don't let a day go by without telling them that you love them." 家に帰って、自分の子どもを抱きしめよう。一日だって愛していることを伝えそびれないように。 その直後に寄せられたというE-mailと手紙の一部には次のようなメッセージがあった。「患者が死ねばテレビの前で赤ん坊のように泣くのか、それともオカマのためだけ?」 オカマやレズという罵声に、暴力の種があると一人の神父が言うシーンがある。誰かを傷つける暴力につながる、その危険を察知する敏感さをその人が示していることは救いだった。同じビデオの中で別の「宗教家」は同性愛者に対する差別を容認している。 * 本編の脇にいくつも考えさせられる話があるのだけれど、その中から小さなエピソードをひとつ紹介しよう。 被害者のマシュー・シェパードは HIV に感染していた。彼はフェンスに、非常に細い紐で固くくくりつけられていたので、駆けつけた警察官はナイフでそれを切ろうとした。持ち合わせの手袋はなかった。しかたなく素手で紐を切り、解いた。彼女の手にはたくさんの傷があって、マシューは血まみれだったから、最悪 HIV 感染したかもしれない。それで、感染の可能性があったときから 36 時間以内に予防のためAZTを服用し、6ヶ月飲み続ける。その間、彼女は毎日吐いて、泣いて、子どもに触れるのも、恐れていた。 緊急事態だった。相手が病気を持っているかどうかなんて考えていられなかった。そのまま放っておくなんてできなかった。 結局その人は感染していなかったのだけれど、マシュー・シェパードがHIV感染していたということはショッキングな事実だった。このために彼は事件の被害者にもかかわらず、同性愛者を嫌う人たちに余計に差別されることになったと思う。 * コントロールできなくなるほどの怒りを、なぜ人は感じるのか。なぜ彼らはあんなにひどいことをしたのか。二人の男がマシューに負わせた怪我は時速 80 マイル(128 キロ)で崖から落ちれば負うかもしれない程、残虐なものだった。どうして誰もそれを止められなかったのか。少しでも関わることになった人たちが自責の念にとらわれている一方で、葬式の会場前で、同性愛者は地獄に落ちろというデモンストレーションをするためにわざわざ他所から集まるような原理主義者たちがいる。 そういえば、ゲイでも何でも「気にしない」という台詞をどこかで聞いたことはないだろうか。日本にいるゲイもそう言われているのではないか。あなたが『…』でも気にしないし、そんなことは重要ではないと、言われながら差別されたことは、今までなかっただろうか。誰かをそんな言い訳つきで差別したことがなかっただろうか。あいつらは『…』だからと殺す手助けを、一度もしてこなかっただろうか。今も、私たちはしていないだろうか。 Reviewed by Janis Cherry [ janis_cherry(at)selfishprotein.net ] The Laramie Project (Vintage Originals) U.S. 定価: $11.00 円相当額: ¥1,304 ペーパーバック 出版社: Random House ; ISBN: 0375727191 ; Vintage 版 (09/2001) Laramie Project U.S. 定価: $5.95 価格:¥705 ペーパーバック 出版社: Dramatist's Play Service ; ISBN: 0822217805 ; (09/2001) 2003年5月27日追記:ララミー・プロジェクト 日本語版舞台 http://www.alles.or.jp/~rinkogun/laramie2.html 2003年12月7日追記:2004年1月4日(土)2時から、東京早稲田で、上映会します。 http://selfishprotein.net/cherryj/indexj.shtml ->> 上映会の宣伝用チラシはこちら。(PDF形式・66KB)<<- 19.03.03 07.12.03 updated Copyright © 2002-2008 "iratsume." All Rights Reserved. |