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韓国のギョーカイを練り歩く その1

初めまして。今、3週間だけだけど、韓国に語学留学に来ているKANGです。この3週間、めいっぱい韓国のギョーカイを練り歩こうと思っていて、その報告をみなさんにお届けします。

* * *

まず、3月7日金曜日、知る人ぞ知る韓国のフェミニストシンガー、チヒョンに会いました。

チヒョンは去年の11月末、豊中市の女性映像祭にゲストで来ていて、ミニコンサートがあったのでした。私はちっとも知らなかったんだけど、韓国の学園祭とかではかなり引っ張りだこで、なかなか人気があるシンガーなのです。韓国のレズビアンとゲイの総合雑誌『バディ』の表紙も飾っています。私はその映像祭の時に少し話したのが縁で、ミーハーぶりを発揮してここに来てすぐさま連絡したのでした。だって、チヒョンもマネージャーのヂョンインも、なかなかナイスなんですもの。

一緒に飲もうっていうことになって、チヒョンとマネージャーのヂョンインが指定してきた店が、梨花女子大の近くにある女性専用の店。ほらほら、女性専用ってだけでも、ピンとくるアナタ、是非お友達になりましょう。

その店は名前が「Africa」というだけあって、店内はなんだかアフリカンな装飾でとっても落ち着いた雰囲気。私は韓国のビアンバーは「ラブリス」か「レスボス」(この名前にもピンと来る?)しか知らなかったんだけど、両方とも集まるのは高校生くらいの若い子ばっかりで、とにかくうるさいらしい。

韓国は年齢に対してかなり厳しい国だから、当然未成年にお酒は売らない。だからガンガンたばこ吸ったり、ギンギン踊ったりしていながらも、飲んでるのはコーラだとかジュースだったりするんである。ヂョンインいわく、子どもばっかりの店でうるさいから、もう少し落ち着いたところで飲もうってわけ。

「Africa」は名門女子大のそばにあるだけあって、とにかくフェミニストの集まる店っていう触れ込みなんだけど、チヒョンがレズビアンも多いって言うんで、見回すと店の人も客も、なんだかギョーカイテイストあふれる感じ。

その店でチヒョンとヂョンインに久々に出会えた感動にまかせて、またまたガンガン飲んでしまいましたが、とにかくこのお店を紹介したいと店のオーナーに話したところ、快諾してくれました。オーナーもレズビアンが結構来るって言ってました。

ちなみに機械オンチの私は日本から来た留学生の馨ちゃんにデジカメ操作は任せっぱなしで、飲むだけ飲んでたのでした。

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夜中3時ころまで飲んでその次の日は、そう、3月8日土曜日、世界女性デーである。イェーィッ。

まずは大学路(テハンノ)で開かれた第19回韓国女性大会というのに行ってみました。これは主催:韓国女性団体連合、後援:政府女性部の他各放送局、協賛:銀行等といったかなり大がかりな大会でした。

テハンノは結構道幅の広い道路で、この道路が歩行者天国になっていてその両側にいろんな団体がブースを開いていました。とにかくその数の多さ、またやってくる人たちもおばさんフェミニスト(失礼)だけじゃなく、女子学生、はたまた男子学生も結構いて、びっくり。ブースにいるのも女子大生とみんな若い。

また、ブースは性暴力反対、売買春反対、戦争反対、戸主制反対(植民地時代に日本に押し付けられた戸籍制度の名残が猛威を振るっている)、環境保護団体、障害者団体等、本当にさまざま。

一番ショッキングだったのは戸主制反対のブースでもらった絵葉書。
ソウルのある小学校の入学式で並んでいる新入生を撮影したものなんだけど、明らかに女子の列が短い。女子の最後尾から男子の最後尾までに点線がひかれていて、「ここにいるべき女子はどこへ行ったのか」さらにその下には「韓国では毎年3万余名の女児が堕胎されている」って書かれてある。男女比率の不均衡は一人っ子政策の中国では聞いたことがあったけど、韓国でもすごいらしくって、だいたい3対1くらいだそうな。

この絵葉書自体もショッキングだったけど、こういう現体制批判的な団体も政府後援の催しで、でんとブースを構えているのが、あぁ、韓国も変わったなぁと思う瞬間でした。今じゃむしろ、日本の方が政府批判的なブースは出しにくいんじゃないかしら。

ここで本当にいろんなパンフレットやら新聞をもらいました。ある新聞によると新大統領の元で、4人の女性が閣僚入りしたことを報じていたし、別の新聞では韓国で人気のあるトランスのモデル、ハリスが女性として初めて女性デーを迎えるっていうインタビュー記事があったりして面白かった。また、フェミニスト雑誌『if』を購入。ヘテヘテな雑誌だったけど、フェミ的にはがんばってる雑誌みたいです。

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その後仁寺洞(インサドン)で開かれた催しに移動。インサドンは韓国の骨董屋やら伝統茶を飲ませる店がひしめいていて、かなり観光客が集まるところ。その一角にちょっとした広場みたいな場所があって、そこで大学生や女性団体が自分たちの女性デーを作ろうというイベントがありました。

イベントの最初はみんなで歌って踊る。そう、「みんな」っていうのは、私たちみたいに集まってきた人たち「みんな」です。歌唱指導があって、ちょっとした振り付けがあって、みんなで一緒に踊るんである。昔からどんなに政治的色彩が濃い集会でも、歌って踊って主張っていうのが韓国式なんである。この際恥ずかしがってなんかいると、それだけで外国から来たというのがバレバレになっちまうんである。私も歌って踊りましたです、はい。

その歌っていうのがとにかくカワユイ。差別をなくす社会にしよう、まわりを見渡して自分を少数者だと感じている人、みんな私たちの姉妹だって感じなんだけど、これを男子学生やらおっちゃんやらも一緒になって歌って踊ってるのがおもしろかった。

この後、参加団体紹介やら、スローガン紹介やら、最後には声明文の読み上げもあって、ちゃっかり「集会」なのだけど、イベントの内容は障害者女性団体が自分たちの美を追求したファッションショー、「貧しいカラオケシスターズ」のダンス、韓国の伝統楽器プンムル演奏(サムルノリ)、それからそう、チヒョンのミニコンサートがあって、集会に集まったみんなの歓声やら道行く人々が足を止めて眺めていくのやらで、大賑わい。

チヒョンは放送禁止になってる歌を3曲披露。地下鉄のおっさんがうっといとか、マスタベーションってステキとか、天下の公道で高らかに歌いあげたのであった。とにかくこのときのみんなの熱狂振りに、ホント、チヒョンってすんげー人気があるんやな〜って思いました。

このイベントは撮影禁止で写真が欲しい人は後で事務局に連絡するように、とのことで、これは参加者のみならず、道を歩く人でもこちらにカメラを向ける人がいると、スタッフがたったったと走りよって撮影禁止を命じるのでした。クィアな集まりにプライバシー保護は最優先だけど、街頭でのイベントでも徹底しているのがすごい。

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ちなみにこのイベント参加団体と各スローガンは以下のとおり。(翻訳KANG)

▼ 戦争に反対する女性連帯 WAW;
     女性の経験から証言する、戦争と暴力反対!

▼ 障害女性 共感;
     私は決して性暴力の対象になりたくはない!

▼ 韓国女性性的少数者人権運動の会 キリキリ;
     同性愛者を差別する青少年保護法を即刻改正せよ!

▼ 女性プンムル団 風の音;
     性的少数者に対する権力中心の文化を打破しよう!

▼ 女性主義ジャーナル イルタ;
     戦争に反対しなければ戦争を経験することになる

▼ 梨花女子大女性委員会;
     性売買の現実を歪曲する言論報道を中断せよ!

▼ プサン女性性的少数者人権センター;
     差異を認めて差別には挑戦する!

▼ クァナ女性の会連帯;
     差別を再生産する教育ではなく、
     偏見なき視点を育てることのできる教育を!

▼ 梨花レズビアン人権運動の会 変態少女空を飛ぶ;
     同性愛嫌悪を助長する異性愛主義教育に反対する!

▼ 北部障害者総合福祉館女性障害者自助の会 タオル;
     女性障害者に対する差別は二重の差別だ

▼ 若いフェミニスト芸術家連帯;
     芸術という免罪符で
     女性の人権を侵害する男性中心的文化に反対する!

ちょっとどーよ、これってすごいやん。私ってこういうのに血騒ぎ肉踊る人なのね。
とか言いながら、この後参加者でのデモ行進は、あまりの寒さにブッチしてしまう体力のない私なのでした。けれど、韓国はけっこう私のタイプが多くって、鼻血が出そうな日々なんである。

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とにかく、21日まで滞在予定なので、韓国のギョーカイで何か知りたいことがあればじゃんじゃん聞いてね。

10.03.03
Text by KANG
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