「この目で見たのだ」
広河隆一監督『パレスチナ1948―NAKBA―』 [link] をやっと見た。
去年遅ればせながら見た『ルート181』 [link] の上映会場での監督本人による告知以来この映画は見るつもりで、にもかかわらず機会を逃し続けていたのだった。
サバイバーたちのインタビュー中、「この目で見たのだ」という彼らの言葉(日本語字幕)が印象的だった。おそらくこれが正確な訳なんだと思う。
パレスチナに起こったナクバ(1948年イスラエル建国時の占領・隔離によってパレスチナ人が被った「大惨事」)について学ぶとき、私はつい南京大虐殺などに対する日本の歴史修正主義にその出来事の置かれている状況を重ね合わせようとしてしまう。けれども個別の前史と文脈と事後と、何よりも個別の出来事が起こったことを理解しなければ、ナクバが何だったのかは分からないままなのだ。他でもないその人が「この目」で見たと言っている様子をカメラは捉えていてスクリーンにそれが映し出されているのだから、この映画が語ろうとしていることを受け取る気が私にあるのなら、「この目」が見たという個別の出来事から自分の目をここで逸らしてはいけない。
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偶然このタイミングで読んだBBCの記事。
“Israeli textbooks to drop ‘Nakba’” (22 July 2009) [link]
健忘症の不安を抱えながら
この数ヶ月に見たもののうち、割と印象深かったものの記録。
■ 映画
- 『スラムドッグ$ミリオネア』 [imdb] :1000円で見られる日にレイトショーでしかやってなかった。何となく悔しい。有名な人が出ていないから集客力が弱いのかなあ。社会派というには弱いけど、ロマンス&エンターテイメントとして楽しめた。画が色鮮やかでほんときれいでした。あとは構成が上手かった。原作者のインタビュー [link] を読んで見る気になった作品ではあるけれど、映画を見ても原作を買って比べてみようとまでは思わなかった。
- 『ミルク』 [imdb] :2回目。感想を誰かと話したかったので、まだ見てない人を誘って見に行った。脚本を読んでその一部を引用したときにも思ったが、この映画は脚本が技術的に上手いと思う。あと映画を1回見た後だったか、 youtube であれこれ出演者のインタビューを見て思ったのは、いやあ、James Franco かわいいわ。 [youtube]
一緒に行った友人は、現実のミルクが持っていたであろう、一部のとことん突き抜けたオネエな人たちの持っている、ホスピタリティ精神の高さだとか懐の深さを、Sean Penn は表現しきれていないのではないか、という意味のことを言っていた。確かに Sean Penn は気が短そうな印象がある。。。
■ 舞台
- 『鳥の飛ぶ高さ』(青年団) [link]:フェスティバル/トーキョーでもらったチラシで知った。で、一度平田オリザ+青年団公演を見てみようと思ったのと、原作脚本と演出がフランス人/フランス語というのでちょっと興味があったのと、何よりも「経済」とつくものであればそれがなんであろうと私は見ておこうという動機で、チケット購入。
感想。青年団は普段歌ったり踊ったりしないらしいのに、歌と踊りが気に入ってしまった(どうしてか心動かされたのですよ)。「経済小説」と同じような感じで「経済演劇」として変にストーリーを追ってしまうと物足りないし、私が好きなタイプのセリフの言葉としての強さは感じなかったけど、魅力ある俳優に支えられた良いパフォーマンスだった。ただ、青年団の舞台は今後積極的には見ないと思う。ファンになるくらいすっごい好きとか、人を誘って行きたいとか、そういう気持ちが沸くことはなかった。まあ、今はお金がないのが大きい。
- 『転校生』[link]:平田オリザ作・飴屋法水(あめや・のりみず)演出で、高校生や高校卒業直後の俳優による舞台。色々引っかかるところがない訳じゃないないんだけど、それはそれとして、私がフェスティバル/トーキョーで見た作品の中では、最も完成度の高い作品だったと思う。これは再演だったらしい [1/2] が、またやることがあればぜひ見に行きたい。
冒頭の、胎児の超音波映像を使う試みは、アレは母親の身体を透明で不可視なものにしてしまうレトリックという分析を読んだことがあって、そういうことを考えたり、登場人物たちがみな女であることを考えたら、安易に思えた。
見終わった瞬間に一緒に行った人に、かわいかったあ、と思わず言ってしまった。18歳から20歳未満くらいのヒトのメスを個人でも集団でもかわいいと思える人ならば、キュン死にするかわいさ。見せられるのは子どもっぽい残酷さはあるけれど、えげつなさなんてのはなくてひたすらかわいい女の子たちがいっぱい。「少女趣味」というかおじさん趣味というか。そういう舞台を、私自身は中の一員として全く見ていなかったところも面白かった。
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Herb & Dorothy (2009)
郵便局員と図書館司書(事務員と訳されてるけどどっちだろ)というコレクター夫妻を追ったドキュメンタリー。
監督が日系の名前だと思ったので調べたら日本語でもちゃんと取り上げられていた。[link]
日本公開はまだ先のよう。作った人に人脈がありそうだし、都市部なら集客できそうです。渋谷くらいで止まらないで近所まで来てくれるとありがたし。
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2010年8月28日追記:
日本に来ましたねー。予想通り渋谷で公開予定。[link]
MILK
映画の日だったので、ごほうびに。[link]
覚悟してはいたし、どういう筋立てかは知ってたのに、全然冷静に見られなかった。そんな訳で映画としてはよく分からず。カリフォルニアの地名や保守的なキリスト教の正義も、自分にとって身近でリアルだった。それで初めから最後までほとんどずーっと泣いていたわけですが、Prop 6 否決のところでわあっときて、ボロ泣き。
脚本はここ [PDF] で読めるのだけれど、先に当時の状況を知り、同じ文型で Anita Bryant が言うのを先に聞いているものだから、
“And the young people in Richmond, Minnesota, or Jackson, Mississippi, or Woodmere, New York… Who are coming out and hearing Anita Bryant on television telling them that they’re wrong, they’re sick, that there is no place for them in this great country, in this world… They’re looking to us for something tonight… (his big moment, realizing his true mission)
And I say, we have to give them hope! (p. 39).”
終わりの方の、そのセリフを踏んでの演説は今となってはよくある、いかにもアメリカな、政治家のアジテーションだけれど、ぐっと来るのだ。
Filed under journal | Tags: movies | Comments Off“Tonight… Tonight it is clear that everyone out there does know one of us. And now that they do, they see we are not sick… they can feel we are not wrong… and they know we should have a place in this great country and in this world… A message of hope has been to sent to all the young people out there… to all those afraid of this wave of hate… to all those who have lost their homes and their hometowns… tonight we know there is a place for us! My brothers and sisters… we can come home again! (p. 93).”
ダージリン急行 The Darjeeling Limited
- 英語オリジナル公式サイト [link]
- 日本語版 [link]
あー楽しかった。選曲が好き。サントラ買ったら部屋で流したい。この映画についての予備知識といえば直前にポスターを見たくらい。ひょっとすると結果としてそれがよかったのかもしれない。今さっき日本語の予告編を見たら、自分が受けた印象とは結構違っていた。
3兄弟の中では Peter が好きだと一緒に見に行った人に言ったら、パートナーが妊娠したと聞いて逃げ出したのに? と問われる。責められてる?
あと、長兄である、Francis の他の人のメニューまで勝手に決めてしまう癖とか、協定を結びたがったり、さらにはリストアップするところが、母親譲りだったと後で分かるシーンが好きだ。
Filed under journal | Tags: movies | Comments OffAnnie Leibovitz
ここを更新すると活動的に見えるのが不思議だ。
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「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」を見に行った。
http://annie.gyao.jp/
パートナーだった、Susan Sontag の話がもっと出てくるかと思っていたんだけど、いざその話になると、あんまり詳しいところは出てこないという場面が何度か繰り返されて、全体に食い足りない感じがした。それから、キャリアや作風の転換期とか、もうちょっと絞って、どこがどうポイントなのかを掘り下げて描いた方がいいんじゃないかと思った。もともと公共テレビの偉大な人たちを取り上げるドキュメンタリーシリーズだったようなので、色々あったけど成功しました、というお話になるのはしょうがないかもしれないけど。テレビより映画というメディアがバイアスを廃する試みには向かないのかもしれない。
しかし、その映画撮影中に、彼女が編集を進めていたらしい本 “A Photographer’s Life: 1990-2005 (2006).” のレビューを見ると、そちらはかなりパーソナルな内容だったようで、それが不評の原因になっているのが皮肉。
Filed under books, journal | Tags: movies | Comments Offプリプリの新鮮な子宮をお刺身で
一生結婚「できない」とか、妊娠出産「できない」とか、「家族」がいないとか、そういう未来ってのは、一般的にものすごーく恐ろしいものらしいですね。羊水腐る発言騒動を読んで、「女の子」はそういう恐怖と背中合わせで生きてるのねと思ったり。おばちゃん、女の子は16で引退したから分からんわ。
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公開されたばかりの Sweeny Todd が早々に終わってしまうというのでこの前1人で見に行きました。しかし、見ながらクスクス笑ってるのは私だけ。れ? 終わってから周りにいた女性たちのがっかり感がびしびし伝わってきたのが何よりも印象的でした。映画館を出たところに貼ってあった、「スゥーニー・トッドのサントラあります!」というCD屋のポスターに「誰もいらないよ」と後にいた人が話していたのに再度驚く。えっと、これはミュージカルだし、好きな人はいると思うですよ。Tobby (Ed Sanders) かわいかった。
Filed under journal | Tags: movies | Comments Off聴衆をバカにしてんじゃないか
North Countryの日本語版と英語版の予告編を見比べた。英語版を見るとセクシュアル・ハラスメント裁判がこの映画の主要なテーマなんだけど、日本語版にはその部分がちゃんと示されていなくて軽く絶望。
日本語タイトルは「スタンドアップ」
Filed under 注意欠陥多動性愛情表現 | Tags: movies | Comments Off映画の最後に
この前、映画を注意深く見ていたら最後に出てきた言葉。
“No animal was harmed during the making of this film.”
この団体がモニターしているらしい。
いや、心配だったんですよ。本編を見てる最中から何となく誰かに怒られないかと思って。余計なお世話かと思ったら、ちゃんと監視している人たちがいたのですね。熱心だなあ。。
こういう基準は法律で決まってるのかしら。監視とかモニターって結局検閲だし、作り手が萎縮するとも言われて、それはそれで怖いんだけれど、動物を殺したり傷つけてからでは遅いというのも事実だから、どこで介入するのかは微妙ですよね。
誰も検閲したくてしているのではないけれど、少なくとも動物のことに関しては検閲かなあ。。ヒトだったら当事者の利害関係があるだろうが、被害を受けるのがヒトでない場合は、検閲という方法しか今はないのかもしれないねえ。暴力加害を止めさせられないことをやってもし方がない。けれども、もしもそれで止めさせられるのなら、検閲のリスクは負う必要があるのかもしれない。
Filed under hiyokomame-lover, veggie | Tags: anti-speciesism, links, movies | Comments Off映画「スーパーサイズ・ミー」を見に行こう
映画「スーパーサイズ・ミー」の上映劇場数が東京都内一館なのはどう考えても少なすぎます。
マクドナルド食が体によくないという周知の事実をどうやって飽きさせずに見せるかに興味があったのですが、いや私は本当に飽きなかったんですけどね、隣席の女性は寝てました。いびきがうるさかった。そんなに眠いなら帰ればいいし、帰らないまでも周りが空席なところに座ればいいのにと思う。
そんな訳でものすごく近くに寝ている人はいたけれど、でも率直に言ってクオリティとしては「ボウリング・フォー・コロンバイン」くらいです。まとまりだけ言えばずっといいしあれ以上にエンターテイニングだし。あれがあんなに売れてこれがこんなに売れないままなのはちょっとね。。もちろん違う人が作ってる違うトピックの映画ですが、ムーアの面白さが通じるんだったらこちらも同じように通じるはず。話によればテレビで完全無視されているそうなので上映館が少ないのはその影響かもしれません。監督が来日したときも主要なテレビ局は取材に行かなかったらしいし。
映画の手法も、本人が言っている通り、ムーアに思いっきり影響されています。ですので、逆に言うとムーアの手法がきらいな人は見に行かない方がいい。
見に行った後には、日本の公式サイトの間違い探しをするのが楽しいです(うそです、早く直してください)。胃腸科のセンセイの専門が心臓科になってるのと(このお医者さんは友だちにいそうな人だ)、他にも間違いがあるので。それからBBSの書き込みじゃなくて趣旨が、なんていうか中途半端にファーストフード企業に気を使ってる?ていうかこのサイト作った人はひょっとして映画見てない?みたいな感じでネタバレさせたくないのかもしれないけど微妙。
反面、字幕翻訳は個人的にキマッテルなあと確か何箇所か感心した(あんまり英語の映画で字幕を見ることってないのでどのくらい上手なのかよくわかんないけど、きっと私と言語感覚が近い人が翻訳したんだと思う)。
内科の初診で、Are you sexually active? という質問をされていて、その後に続けて医者が A girlfriend? って聞いてるのね(たしか)。それを「女性?」だったかな、そんな風に訳していた。結婚してるかどうかじゃなくて(もちろん妻か恋人かを医者が知ったところで関係ないので)、あえて言うならこの質問は異性と性行為しているかどうかを聞いてるってことなんだーそんなこと気づかなかったーと思いながら見ていました(ひょっとすると相手が一人だけかと聞いてるのかもしれません・それとも他に意図が?)。私はアメリカの医者にかかったとき全く同じ質問をされたことがあって、最初ので、えっとパートナーは女で、と言ったから、次に来る質問が普通どういう意図を持つものになるか知る機会を失いました。
ところで私が見に行ったわけは非常に単純で、サイトを見ていたら監督の恋人でヴィーガン・シェフのアレックスがかわいかったから。彼女のサイトはここです。かなり凝ったおいしそうなレシピが載っています。自分には根気がないので機会があったら誰かに作ってもらおう。しかしヴィーガン・シェフという仕事が成り立つってのがNYな感じだわ(少なくとも名乗れるつーのが)。
正直言うとこの映画はベジタリアンにとってそんなに楽しくはないです。画面からマックを食べた後のゲップの臭いがしてきそうで気分悪くなるから。そんな時、アレックスが出てくるだけで気持ちが紛れるのですわ。そしてこの人が恋人と議論になる場面はどうも不利なのですっごく応援したくなります(笑)。というより恋人(監督)の言語表現力がありすぎるんだと思う(ブログも日本に来たときの様子なんてかなり面白いしインタビューもいい感じ)。こいつをヴィーガンにするのが難しすぎるのかもしれません。がんばれ、アレックス。結果としてヴィーガン化させてしまえばいいのよ。と私はアレックスを影ながら応援中。
けれども、劇中のチキンナゲットの作り方アニメーションは、動物の権利広報系な感じ(右上イメージ画像参照)だった。
英語の公式サイトはこちら。最近更新のない監督自身のブログはここからリンクされています。ニュース更新あり、日本のサイトよりちゃんと読むところやリンクがいっぱいあって好き。
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